研究課題
アクチノイドが環境水中において水和イオンや無機・有機錯体として溶存しているのか、それとも周囲の岩石・堆積物中の鉱物表面に吸着し固定されるのかによってその後の移行過程が大きく左右される。例えば、微生物活動の活発な環境では一般的には不溶性の四価アクチノイドが、水中に溶存した状態で移行しやすい化学形態になる可能性がある。そこで、本研究では実際の環境中において微生物が四価アクチノイドを可溶化する有機化合物を産生しているのかを明らかにすることを目的とした。微生物が産生する有機化合物の中で四価アクチノイドを可溶化する可能性がある候補としては、シデロフォアが挙げられる。そこで、糸状菌Chaetomium cupreumのシデロフォアを単離しHPLC/MS及びX線結晶解析により同定した結果、oosporeinであることが判明した。oosporeinはフェノール性OHを4つ分子内に有し、Alとの錯体形成に寄与していることがpH滴定実験により明らかとなり、錯安定度定数の値も一般的な有機酸に比べて高い値を示した。また、北海道足寄町のオンネトー湯の滝において採取した水試料の希土類元素(アクチノイドのアナログ)濃度の分析を行った。その結果、一般的な環境水中に含まれるよりも高い濃度の希土類元素が検出された。このことは活発な微生物活動により産生された有機化合物と希土類元素が水中で錯体を形成している可能性を示唆している。最終年度である今年度は、原子力機構人形峠環境技術センターの鉱さいたい積場において坑水及び堆積物試料を採取し分析を行った。その結果、堆積物は主に鉄水酸化物からなることが分かった。こうした鉄水酸化物はウランを吸着することが知られている。それにも関わらず、坑水中のウラン濃度は一般的な環境水に比べて高いことが明らかとなった。このことはウランが坑水中で有機錯体を形成している可能性を示唆している。
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