研究課題/領域番号 |
18K19049
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
原田 潤 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (00313172)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 分子性固体 |
研究実績の概要 |
無機酸化物セラミクスの強誘電体は圧電材料として産業界で広く用いられている.しかし,高性能材料の多くが有毒な鉛や希少元素を含むため,その代替材料が強く求められている.近年,無毒で豊富な元素からなる分子結晶の強誘電体が大いに注目されているが,圧電材料としての研究展開はほぼ未開拓である.その主な原因は,分子性結晶が一般に,対称性の低い結晶構造を持つことにある.低対称な分子性強誘電体の多結晶材料中では,各結晶粒子の分極はバラバラに向き,圧電効果は打ち消し合うため,材料全体としては圧電性を示さない.我々は最近,柔粘性/強誘電性イオン結晶という新しいタイプの強誘電体を開発することで,分子結晶として初めて「電場印加による結晶分極の三次元的再配向」に成功した.このタイプの結晶は,結晶構造の対称性が高く,多結晶圧電材料での活用が期待できる.本研究では,この柔粘性/強誘電性イオン結晶に着目して,分子性圧電材料開発を行う.更に,圧電体としての性能と,結晶構造・分子構造との相関を明らかにすることで,より高性能な材料開発の設計指針を確立する. 平成30年度は,いくつかの柔粘性/強誘電性イオン結晶を合成し,その圧電性について検討を行った.柔粘性/強誘電性イオン結晶の粉末試料を高温で加圧成形することで,多結晶自立フィルムを作製した.圧電テスターを用いて多結晶フィルムのd33値を求めたところ,分子結晶としては非常に大きい値を示すことを見出した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,柔粘性/強誘電性イオン結晶を開発し,その多結晶体が圧電性を示すことを明らかにした.いくつかの化合物で,多結晶材料が大きな圧電性を示すことを見出した.この結果は柔粘性/強誘電性イオン結晶が圧電材料として非常に有望であることを示している.
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き,柔粘性/強誘電性結晶の開発を進め,得られた化合物の多結晶フィルムを作製し,その圧電性を評価する.さらに,圧電係数の大きさと,強誘電体の分極発現機構および結晶構造との相関についても検討を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究で開発した圧電材料は当初予想していたものよりも圧電性が高いことが明らかとなった.そのため,新たに装置を購入して特別な測定を行わなくても十分に圧電性を評価できることがわかった.これにより生じた次年度使用額は翌年度分とあわせて,高額な原料試薬の購入に使用し,より多くの対象化合物の検討を行う計画である.
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