同様なサイズと沸点を持つ窒素分子と酸素分子を分けることは非常に難しい。そもそも、窒素と酸素の最も顕著な性質の違いは、“窒素分子は反磁性、酸素分子は常磁性”の磁気的性質であり、このような正反対の性質を利用できれば、“スルースペースな磁場でガスを選別する”という全く新しい概念による革新的材料が創製できるかもしれない。本研究の目的は、「反磁性物質と常磁性物質を差別化する多孔性材料の創製」である。ナノレベルで個々のゲスト分子の磁気スピンを感知する多孔性低次元磁性体は、全く正反対な視点から考えると、ナノスケールの磁石(磁場)中に反磁性物質や常磁性物質を挿入していることになる。即ち、細孔内部(層間)の局所磁場Hの磁場勾配dH/dzに対する挿入分子の磁化Mを考えれば、挿入分子に係る力Fzが存在することになる。このことは、酸素既存状態で外部層格子が強磁性的に磁気転移した場合、細孔内により吸引され、逆に反磁性物質である窒素分子や二酸化炭素が既存である場合、細孔から排斥される方向に力が働くと予想できる。ナノレベルの局所的な磁場空間を使った“分子ふるい”は、分子材料の持つ新たな可能性を引き出すに違いない。本年度は、同一温度で酸素と窒素を別々、また一定の割合で混合したガスにより磁気変化を測定する特殊セルを設計し、ガス圧を制御しながら磁気測定を行えるシステムを作成した。このセルを使用することにより、同一温度で酸素と窒素を見分ける多孔性磁石の測定に入ることが可能になった。
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