研究課題
本研究は、原子間力顕微鏡(AFM)と走査型トンネル顕微鏡(STM)を液中で同時に動作させ、原子分解能をもつAFM像とSTM像を同時に取得する技術を開発するものである。そのためには、力とトンネル電流を同時に検出できるセンサが必要となる。本研究では、音叉型水晶振動子を利用して、そのようなセンサを実現する。このセンサでは、音叉型水晶振動子の片方の梁を固定し、もう片方の梁を、その共振周波数で機械的に振動させる。その際、圧電効果で流れる電流を検出することで、梁の変位を検出し、そこから、梁にとりつけた金属探針と試料の間に働く力を検出する。また、金属探針と試料の間に流れるトンネル電流も検出する。そこで、水晶振動子を固定し、かつ変位検出用電流とトンネル電流を検出するための電極を備えた、固定基板を試作した。それを用いて水晶振動子を固定し、先端部以外を絶縁コーティングした探針を取り付け、固定基板のそれぞれの電極と接続することで、同時検出用センサの作製を実現した。これを用いて、大気中でイメージングし、力とトンネル電流を同時検出できることを確認した。また、液中STM測定に向けて、試料の電位を電気化学的に制御できるシステムを構築した。
2: おおむね順調に進展している
液中でのAFM・STM同時測定に必要な力とトンネル電流を同時に検出できるセンサ(qPlusセンサ)の試作を行い、その作製手順を確立した。また、イメージングにも応用できる性能を有することを確認した。また、液中STM測定に必要な周辺装置を揃え、従来通りの液中STMイメージングができることを確認した。以上のことから、当初の計画通り、研究を推進できているといえる。
作製した力・トンネル電流同時検出センサを用いて、液中でAFMとSTMの同時原子分解能イメージングを実現できるように、高配向性グラファイトなどのテストサンプルを使って、最適な測定条件を検討する。また、最終年度に向けて、力とトンネル電流の3次元空間分布計測を実施できるハードウェアの構築とソフトウェアの作製に取り組む。
本研究費は主に水晶振動子や水晶振動子取付基板(特注)の購入に使用する予定であったが、代表者の別の予算でまかなうことができたため、次年度使用額が生じた。次年度は、これらで構成されるセンサの試作と実験を日々繰り返していくことになるため、水晶振動子や水晶振動子固定基板の大量消費が見込まる。そのため、次年度に予定しているこれらの購入費用に上乗せして使用する。またセンサの固定に必要な冶具も、より使いやすいように改良の必要性を感じているため、次年度に予定している部品試作に上乗せして使用する。
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Journal of Physical Chemistry C
巻: 123 ページ: 7416-7424
10.1021/acs.jpcc.8b11648
巻: 122 ページ: 21983-21990
10.1021/acs.jpcc.8b06928