研究課題/領域番号 |
18K19058
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
大西 洋 神戸大学, 理学研究科, 教授 (20213803)
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研究分担者 |
手老 龍吾 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40390679)
平山 朋子 同志社大学, 理工学部, 教授 (00340505)
天野 健一 京都大学, 工学研究科, 助教 (30634191)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 潤滑油 / 油性添加剤 / エネルギー散逸 / 表面界面 / 蛍光分光 / 単一分子 / 蛍光顕微鏡 / トライボロジー |
研究実績の概要 |
全反射照明が可能な蛍光顕微鏡を用いて、バルク潤滑油に溶解した蛍光分子が発する蛍光の寄与を抑え、添加剤層に取り込まれた蛍光分子を画像計測した。ヘキサデカン(C16H34)基油のみ、およびこれにパルミチン酸(C15H31COOH, 濃度0.1 mass%)を添加したモデル潤滑油に蛍光分子を加えて測定に用いた。ピラニア溶液に浸漬して、親水化したガラス基板とモデル潤滑油の界面に波長532 nmの励起光を照射して、界面に捕捉された蛍光分子が発する蛍光像を毎秒30画面の撮像速度で記録した。 親油性が高くしかも532 nm光励起で強い蛍光を発する化合物としてboron-dipyrromethene系の蛍光分子(略称BODIPY)が有望である。これまでに商業的に入手できる5種類の蛍光分子(BODIPY 581/591・R6G・530/550・558/568・TMR-X)を用いて試験測定をおこなった。これらのうちTMR-Xは潤滑油中で著しく大きさの異なる二種類の形態(単一分子と凝集体)を与えるために本測定に適さないことがわかった。残る4種類の蛍光分子を用いた測定では、ほぼ均一な大きさの光点が現れたので、界面に捕捉された単一蛍光分子に帰属した。 潤滑油-ガラス界面に励起光を照射し続けると、蛍光分子は一定の確率で焼尽破壊されてゆく。このため一画面内に存在する蛍光分子の数は照射時間とともに減少するが、10秒程度の時間が経過すると一定数となり0までは減少しなかった。液中からの捕捉・励起光による焼尽・液中への脱離の速度が釣りあった定常状態に達した時点でのBODIPY 581/591の数密度を、純ヘキサデカン中とパルミチン酸添加ヘキサデカン中で比較すると、パルミチン酸添加によって数密度は減少した。パルミチン酸添加剤層の形成によってBODIPY 581/591の吸着が妨げられたと解釈できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に沿ってBODIPY系蛍光化合物5種類を試用し、うち4種類が潤滑油-ガラス界面の単一分子蛍光追跡に適していることを確認できた。これによって、2019年度に現有する実験装置をもちいて潤滑油界面の分子運動計測に挑戦する基盤を構築できたため。
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今後の研究の推進方策 |
蛍光分子を添加した潤滑油-ガラス界面で記録した単一分子蛍光動画像の目視観察から、界面に捕捉された単一蛍光分子のなかに、連続画像のなかで位置を変えない分子と、界面に捕捉されたまま面内方向に運動する分子が存在することがわかった。測定条件(蛍光分子の種類・濃度・測定温度など)を最適化することで面内運動の定量的評価を実現していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
(1)当初計画では市販のBODIPY蛍光化合物群に加えて新たな蛍光化合物を合成することを想定して費用を計上しや。市販化合物5種類を試用したところうち4種類が良好な成績をあげたために新規化合物の合成が不要となったため。 (2)当初計画では蛍光励起に試用するYAGレーザーランプの更新を予定していたが、定格寿命を越してもランプの光出力は低下しなかったため、本年度中のランプ更新を見送ったため。
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