研究課題
本課題では、有機エレクトロニクス材料などへの発展を見据えて、新規な有機πラジカルであるペンタセン-安定ラジカル連結系を設計・合成し、(1)交換相互作用とπラジカルの超高速励起状態ダイナミクスの関係解明、(2)ラジカル付加による基底状態への超高速失活現象の励起状態でのスピン準位依存性の解明、(3)純有機おけるフェムト秒領域の系間交差と超高速失活の実現 の3課題を設定し研究を遂行してきた。ペンタセンは、結晶状態での高いホール伝導度と薄膜化の容易さのため有機半導体素子への応用が期待されているが、可視光による劣化と有機溶剤に対する難溶性が素子作製や実用化の大きな障害となっていた。昨年度までに、π電子軌道のつながり方(πトポロジー)を制御して励起スピン状態を変えた系としてペンタセン骨格を挟んでtriisopropylsilylethynyl 基(TIPS基)とphenylverdazylをethynyl基で連結して分子の平面性を高めた系(1p)及びm-ethynylphenylverdazylを連結した系(1m)の合成に成功し、超高速過渡吸収測定による励起状態ダイナミクスの予備的な知見を得ていたが、合成したラジカルの純度と、過渡吸収スペクトルの解析に困難を有していた。本年度は、両者のラジカルの純度を高めることに成功し、それらを用いて過渡吸収の再測定を実施した。その結果、実験データの詳細な解析により1m(1p)のペンタセン部位の励起一重項状態と三重項状態の寿命をそれぞれ537 fs(135 fs)および49ps(74ps)と見積もることができ、本研究課題の主たる目的である(2)および(3)は、ほぼ達成できた。また、これらの成果を、学術論文として投稿し、受理された。さらに、ethynylphenylverdazylをペンタセン骨格を挟んで2個連結した系の合成とその物性評価も試みた。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
Physical Chemistry Chemical Physics
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10.1039/d2cp00683a