研究課題/領域番号 |
18K19064
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
近藤 寛 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (80302800)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 触媒・化学プロセス / 表面・界面物性 / 量子ビーム / 化学物理 |
研究実績の概要 |
本研究では、大気圧反応ガス存在下のXAFS測定には用いてこられなかった電子収量法のための測定系を反応セルに組み込んで、極端軟X線大気圧表面XAFSの測定ができるシステムを開発し、それを大気圧下での触媒反応のオペランド観測に応用することを目的としている。本年度は初年度であり、反応セルの動作確認、反応セルへの電子収量測定系の組み込み、反応セルのマニピュレーターへの搭載による位置調整機構の付与、これらを含む測定システムの製作・立ち上げ、試し測定を行った。反応セル周りの改造を含む測定システムの製作までは問題なく行うことができた。 本測定システムを放射光ビームラインに接続して試し測定を行ったところ、電子収量電極からの微小電流を観測することができた。しかし、転換電子収量法による試料からの信号増幅率が十分ではないためにI0信号の影響が強く出ることが分かったので、電子収量測定系の改良が必要なことが明確になった。また、セルを真空容器内に設置することで、極端軟X線の減衰を抑えることができたが、操作性の問題や、ガス漏れによる測定中断の問題が生じることが分かり、セルの配置を改良する必要があることが分かった。さらに、燃料電池発電時に生じる水が測定を妨げることが分かったので、水の除去機構を加える必要があることも分かった。このように、本年度の装置製作および試行測定によって、セルの設置環境やセルそのものの改良すべき点が明確になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
きちんと発電動作をする燃料電池セルに電子収量測定系を組み込み、電子収量信号を計測してスペクトルを得るところまでは到達できたので、2年目は転換電子収量法を有効に機能させるための改良や条件出しを行うことに着手する。想定されたスケジュールでは転換電子収量法を用いたスペクトル測定について1年目で見通しを立てることを目標にしていたので、おおむねぞのような状況に達していると判断できるため。
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今後の研究の推進方策 |
試料からの信号の転換電子収量法による増幅率をもっと上げる必要があることが分かったので、現在の増幅用バイアス電圧を1桁以上、上げることができるようにし、バイアス電圧下で安定に微小電流を測定できる測定器を導入する。燃料電池発電時に発生する水が測定系に与える影響を低減するためのセルの改良を行う。また、真空容器の中にセルを入れて測定を行ってきたが、操作性が悪く、真空容器内に反応ガスが漏れて測定が中断することがあったので、セルを真空容器の外に設置する配置に改良する。これらの改良によって、窒素ドープグラフェンのN K吸収端XAFSスペクトルの発電条件下での測定を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
発電時に試料のXAFS信号電流を発電電流と区別して検出するために、軟X線に同期した位相検波増幅システムを導入することを計画していたが、軟X線光路上に光変調器を導入することに解決が難しい技術的課題があることが分かった。そのようにする代わりに、試料をアース電位にし、電子収量電極で信号電流をとる方がよいと判断して位相検波増幅システムの導入を見送ったために残額が生じた。この分は、翌年度、電子収量電極に高電圧バイアスをかけながら微小電流計測ができる計測器の導入に用い、当初計画とは一部別なアプローチによって、信号取得を目指す。
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