研究実績の概要 |
オリゴペプチドをα-アミノ酸の触媒的脱水縮合によって合成する手法の開発を本研究目的とする。 初年度はジペプチド合成に有効な脱水縮合触媒の探索を目的に様々なボロン酸をスクリーニングした。その結果、最近見つけた2,4-ビス(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸に加え、新たに3,5-ジメトキシ-2-ヨードフェニル酸に高い触媒活性があることが明らかとなった。フェニルボロン酸のメタ位にアルコキ基を導入すると、その誘起効果によってホウ素のLewis酸性が向上すると考えている。また、オルト位のヨード置換基についてはホウ素中心へのアミン基質への配位による触媒失活を立体障害によって防ぐ効果があるものと考えている。これらのボロン酸触媒を10 mol%用いて、加熱脱水条件下、中程度の収率でジペプチドを合成することに成功した。生成物のエピ化については5%程度確認されており、最終的にはエピ化を1%未満に抑える必要がある。 原料として用いるα-アミノ酸のN-保護基やα-側鎖が反応性に大きな影響を与えることがわかった。基質によってボロン酸の触媒活性が異なるので使い分ける必要がある。しかし、どのような基質に対しどのようなボロン酸が最適なのかはまだ解明できていない。また、α-アミノ酸の塩酸塩を基質に用いると若干ではあるが、反応収率が向上することがわかった。この酸の役割についてはまだ解明できておらず、塩酸以外にも効果的な酸がある可能性があり、引き続き検討を行う。
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