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2018 年度 実施状況報告書

アレーン類の遷移金属へのπ配位を駆動力とするシクロファン合成法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 18K19080
研究機関徳島大学

研究代表者

小笠原 正道  徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 教授 (70301231)

研究期間 (年度) 2018-06-29 – 2020-03-31
キーワードシクロファン / メタセシス / クロム / ルテニウム / モリブデン / パイ配位
研究実績の概要

本研究計画では、「benzenoid芳香族化合物の遷移金属へのパイ配位」と「遷移金属基質へのメタセシス反応」を駆使して、合成困難な化学種として知られる「シクロファン類」の新たな効率的合成法を開発することを目的としている。遷移金属原子としては、手始めにゼロ価クロムを選択し、(アレーン)2Cr錯体を遷移金属触媒反応により適宜分子変換し、その後、酸化条件にふしてクロム原子を定量的に取り除くことにより配位アレーン部位を取り出せば、目的とするシクロファン類が合成できることになる。
2018年度においては、種々のアレーンクロム錯体の遷移金属触媒条件下における耐性について検討した。まずは合成が容易な(アルケニルアレーン)クロム・トリカルボノル錯体を用いた分子変換を試みた。アルケニル基を有するアレーンクロム錯体を、ルテニウム・アルキリデン触媒(ブラブス触媒)あるいはモリブデン・アルキリデン触媒(シュロック触媒)存在下で反応させたところ、アレーン部位のクロムへの配位を保持したままオレフィン・メタセシス反応が進行し、二量化により二核アレーンクロム錯体が高収率で得られる。この遷移金属触媒反応中、アレーンクロム部位は保持されたままで触媒反応に影響を与えない。こうして得られた二核アレーンクロム錯体の溶液を太陽光照射下で空気中で撹拌すると、酸化的ににクロムを定量的に取り除くことができた。脱クロム後の有機配位子は、カラムクロマトグラフィで精製することにより単離可能であった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初の計画で分子設計したクロム錯体基質が、想定したルートでの合成が難しいことが判明した。一方、別ルートで合成した基質を用いた遷移金属触媒反応は、当初の目論見通り進行することが確認されたので、クロム錯体基質を合成することができさえすれば、研究計画を達成できる目処がついている。2年目以降では、基質の合成ルートを再検討し、目的達成を目指すことになる。

今後の研究の推進方策

前年までに得られた研究結果に基づき、以下の点について検討を加える予定である。
(1)ポリアルケニルアレーン・クロム錯体の合成ルートの再検討。前述の通り、当初想定した合成ルートでの反応基質の合成が困難であることが判明した。そこで、分子設計した反応基質の合成ルートを再検討し、当初計画の達成を目指す。当初は、クロム原子に配位したアレーン部位の化学修飾を計画していたが、「先に適切なアルケニル置換基を導入したアレーン」をクロム原子に配位させる合成ルートを検討する。
(2)オレフィン・メタセシス以外の遷移金属触媒反応の利用。(アルケニルアレーン)クロム錯体の遷移金属触媒反応条件における耐性が確認されたので、他の触媒反応によるアレーンクロム錯体の分子変換を試みる。場合によっては、「触媒反応」だけではなく、当量反応による分子変換も検討する。具体的には、パラジウム触媒ヘック反応などを検討する予定である。
(3)クロム以外の中心金属の利用。アレーン類は、クロム以外にもモリブデン、鉄などとも安定な錯体を形成することが知られている。本年は、クロム以外の遷移金属種を中心金属として利用することも検討する。

次年度使用額が生じた理由

当初予定よりも研究室所属の大学院生の人数が多かったため、研究補助員の採用を取りやめたため、人件費/謝金を抑制することができた。また、大学院生の研究発表のための旅費に関して、別の財源による奨学金を得ることができたため、本研究費からの出費を抑制することができた。また、物品購入に関しても支出を抑制することができたため。2年目には、必要に応じて試薬/器具などの購入に使用する予定である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件)

  • [雑誌論文] Theoretical Investigations of Rh-Catalyzed Asymmetric 1,4-Addition to Enones using Planar-Chiral Phosphine-Olefin Ligands2019

    • 著者名/発表者名
      Kawashima, K.; Sato, T.; Ogasawara, M.; Kamikawa, K.; Mori, S.
    • 雑誌名

      J. Comput. Chem.

      巻: 40 ページ: 113-118

    • DOI

      10.1002/jcc.25550

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Application of Polysaccharide-Based Chiral HPLC Columns for Separation of Non-Enantiomeric Isomeric Mixtures of Organometallic Compounds2019

    • 著者名/発表者名
      Ogasawara, M.; Enomoto, Y.; Uryu, M.; Yang, X.; Kataoka, A.; Ohnishi, A.
    • 雑誌名

      Organometallics

      巻: 38 ページ: 512-518

    • DOI

      10.1021/acs.organomet.8b00819

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Catalytic Enantioselective Aldol Reaction of Unprotected Carboxylic Acids under Phosphine Oxide Catalysis2018

    • 著者名/発表者名
      Kotani, S.; Yoshiwara, Y.; Ogasawara, M.; Sugiura, M.; Nakajima, M.
    • 雑誌名

      Angew. Chem. Int. Ed.

      巻: 57 ページ: 15877-15881

    • DOI

      10.1002/anie.201810599; 10.1002/ange.201810599

    • 査読あり
  • [学会発表] ジフェロセニルホスフィノ基を有する非対称不斉二座ホスフィン配位子の開発と応用2019

    • 著者名/発表者名
      一柳 浩輝、胡 淏、浦 康之、小笠原 正道
    • 学会等名
      日本化学会第99春季年会
  • [学会発表] 求核部位を有する2-ブロモ-1,3ジエン類のパラジウム触媒分子内環化における異常な選択性2019

    • 著者名/発表者名
      小西 卓磨、一尾 裕章、小笠原 正道
    • 学会等名
      日本化学会第99春季年会
  • [学会発表] ynthesis and Application of C1-Symmetric Bisphosphine Ligand Having Diferrocenylphosphino-Donor Moiety2019

    • 著者名/発表者名
      Ichiryu, H.; Hu, H.; Ura, Y.; Ogasawara, M.
    • 学会等名
      The Fifth International Forum on Advanced Technologies (IFAT 2019)
    • 国際学会
  • [学会発表] Unusual Regioselectivity in Palladium-Catalyzed Cyclization of Nucleophile-Tethered 2-Bromo-1,3-dienes2019

    • 著者名/発表者名
      Konishi, T.; Ichio, H.; Ogasawara, M.
    • 学会等名
      The Fifth International Forum on Advanced Technologies (IFAT 2019)
    • 国際学会
  • [学会発表] Enantioselective Synthesis of Planar-Chiral Ferrocene-Fused Cyclic Phosphonic Acids2019

    • 著者名/発表者名
      Okazaki, A.; Liu, Q.; Yasue, R.; Yoshida, K.; Ogasawara, M.
    • 学会等名
      The Fifth International Forum on Advanced Technologies (IFAT 2019)
    • 国際学会

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公開日: 2019-12-27  

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