研究課題/領域番号 |
18K19083
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
佐藤 哲也 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (40273586)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | カルボン酸 / 脱水素カップリング / 酸化剤フリー / 縮合環形成 |
研究実績の概要 |
本研究では、これまでに我々のグループが開発したペンタメチルシクロペンタジエニルロジウムあるいはイリジウム錯体触媒を用いる酸化的ならびに還元的カップリングを駆使して、入手容易な出発物質から、短段階で簡便にアセン類をはじめとする機能性パイ共役分子を合成するための新しい手法を開発することを目的としており、本課題二年目に当たる2019年度には、酸化剤を用いない条件での脱水素カップリングによる縮合芳香族化合物合成を行った。 【イリジウム触媒を用いる芳香族カルボン酸と内部アルキンとの脱水素カップリング反応】ペンタメチルシクロペンタジエニルイリジウム錯体を触媒として用い、安息香酸をはじめとする芳香族カルボン酸を、ジフェニルアセチレンなどの内部アルキンとともに反応させると、脱炭酸および脱水素を伴ってカップリングが進行し、1:2カップリング生成物を与えることを見出した。興味深いことに、ここでは酸化剤を加えない条件で脱水素カップリングが効率よく起こる。このユニークな反応についてメカニズムを調べ、ここでは内部アルキンが水素アクセプターとして機能していることを明らかにした。 【パイ共役分子合成】上記反応において、芳香族基質として入手容易なサリチル酸類を用いた場合も、ジフェニルアセチレンとの脱水素カップリングがスムーズに進行し、5,6,7,8-テトラフェニル-1-ナフトール誘導体が選択的に合成できることを明らかにした。得られたナフトール類のいくつかは、強い蛍光を示すことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに調製した種々遷移金属錯体触媒を用いて、モデル反応となる安息香酸とアルキンとの脱水素カップリングを行い、その触媒活性を評価している。その中で酸化剤を添加しないクリーンな条件下、脱水素カップリングを行うために有効な触媒系の傾向を把握できた。 さらにそれらの触媒系の特徴を生かして、ナフタレンやアントラセン骨格を構築することに成功している。
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今後の研究の推進方策 |
酸化剤フリーの条件での脱水素カップリングでは、酸化されやすい基質や末端アルキンも使えると期待される。多様な基質の反応に適用し、幅広い縮合多環芳香族化合物合成へと進化させる。またアルキン以外の水素アクセプターの適用を試み、この還元反応も利用した機能性分子合成手法へと発展させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
モデル反応について、予定より数多く検討を行い、反応系について詳細に調べた。その際、昨年度までに購入した試薬等が使えたため、物品費の支出が抑えられた。次年度は多様な基質の反応について検討を行う予定であり、全ての試薬を購入して研究を始める必要がある。研究の進行とともに必要試薬を購入し、経費を使用していく予定である。
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