本研究では、これまでに我々のグループが開発したシクロペンタジエニルロジウムあるいはイリジウム錯体触媒を用いる芳香族基質の分子間カップリングを駆使して、入手容易な出発物質から、短段階で簡便に縮合ヘテロ環化合物をはじめとする機能性パイ共役分子を合成するための新しい手法を開発することを目的としており、本課題最終年度に当たる2022年度には、様々な配向基を有する芳香族およびヘテロ芳香族基質とアルキンおよびアルケンとの直接カップリングによる縮合(ヘテロ)芳香族骨格構築およびこれをコアとするパイ共役分子合成を行った。 ロジウム触媒を用いる3-(アセチルアミノ)クマリン類とアルキンとの脱炭酸/脱水素カップリング反応 ペンタメチルシクロペンタジエニル配位子を有するカチオン性ロジウム触媒を用い、3-(アセチルアミノ)クマリン類をアリールアセチレンとともに反応させると、脱水素および脱アセチル化を伴う連続ダブルC-H環化が起こり、五環式縮合ピロール誘導体が一段階で合成できることを見出した。ここで構築される縮合環骨格は、様々な生物活性を示す天然海洋アルカロイドのラメラリン類と類似することから、その特性についても今後調べる予定である。 ロジウム触媒を用いるN-アセチルカルバゾールとアルケンとの直接カップリング反応 ロジウム触媒および銅塩助触媒存在下、空気雰囲気で、N-アセチルカルバゾールをアルケンとともに反応させたところ、アセチル基を配向基としてカルバゾール環のC1位の炭素-水素結合が位置選択的に切断され、1-アルケニルカルバゾールを与えることを見出した。条件によっては脱アセチル化を伴って反応が進行し、1-アルケニル-N-H-カルバゾールが得られる。適切な配向基を用いると、酸化剤を添加しない条件でも反応が起こり、レドックスニュートラルなカップリングへの展開も可能性が示唆された。
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