研究実績の概要 |
研究初年度は、発光性Cu(I)錯体の固相合成法における融解配位子の役割を明らかにするべく、二核錯体系[Cu2I2(PR3)2(pyrpy)]のホスフィン配位子類縁体を用いた融点制御と、配位高分子[Cu2I2(m,m’-bpy)]n系におけるビピリジン配位子による融点制御を行った。 二核錯体系においては用いるホスフィン配位子によって、最も低い融点を有する補助配位子pyrpyの融解によって目的錯体が形成する場合と、より高い温度が必要になる場合に分かれることが明らかとなり、融解したpyrpy液体に対するホスフィン配位子の溶解性が強く影響している可能性が示唆された(Inorg. Chem. 2018, 57 5929に発表済み)。 配位高分子系では、110℃付近に融点を有する4,4’-ビピリジンと、室温で液体である3,3’-ビピリジンを用いて検討したところ、3,3’-bpyでは加熱する必要なく目的とする配位高分子が原料の磨砕混合により速やかに生じる一方、4,4’-bpyを用いた場合には110℃以上に加熱しないと得られないことが明らかとなった。また用いる配位子の量は、原料であるCuIに対して少過剰量必要であるものの、140℃で余剰な配位子を揮発させて取り除くことで、完全無溶媒条件下で定量的に目的の配位高分子が得られることも明らかとした(Inorg. Chem. 2019, 58, 4456に発表済み)。 以上の結果から、融解した配位子が錯体形成反応を著しく加速していることが明らかとなり、通常の溶液反応で用いる溶媒の役割を果たしていることが確認された。
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