研究実績の概要 |
本研究は配位不飽和サイト(CUS)を有する多孔性配位高分子(PCP)を基体として高性能の磁気共鳴画像化法(MRI)の造影剤(CA)を創製することを目的としている.前年度までに生体毒性の低いMn(II)と2,5-dihydroxy-1,4-benzenedicarboxylato (DHTP) から配位高分子Mn-MOF-74を合成し,ポリエチレングリコール(PEG)鎖を表面に導入することによって,水分散性の高いPEG化Mn-MOF-74を得ることに成功している.今年度は前年度,新型コロナウィルス感染症の影響で実施できなかった(1)動物実験および(2)安定性の調査を行った. (1)動物実験: BALB/Cヌードマウスにマウス結腸癌由来細胞株Colon-26細胞を移植して6日後,PEG修飾Mn-MOF-74のPBS分散液([Mn] = 12.6 mM)を150 μL尾静脈投与した.直後から120分後に動物用7T-MRIスキャナで造影した.投与30分後に腫瘍の信号強度が100%以上の増加を示した.これはMOFがEPR効果により腫瘍特異的に集積したためと考えられる.腎臓や膀胱の信号変化の経時変化から,造影剤は腎排泄されることが分かった.一方,T2強調画像でも30分後の腫瘍の信号強度増加が見られたが,30%程度の増加に留まった. (2) 安定性の調査:10.0 mgのPEG化Mn-MOF-74を PBS 30 mL に分散して 0, 2, 4, 24, 30 時間後に限外ろ過し,PBS液中に漏出したDHTPを定量して分解率を調べた.μMレベルのDHTPを検出したものの分解率に換算すると30時間後でも1%にも満たず,安定性が示唆された. 以上,本挑戦的研究(萌芽)ではPEG化Mn-MOF-74がMRIのT1造影剤として有力であることを明らかにした.
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