研究実績の概要 |
1.Pd(II)-NHC錯体を触媒、オキソン(KHSO4・K2SO4・2KHSO5)を酸化剤として用いることにより、pH2の水溶液中で、効率よくジクロロベンゼンなどの電子不足芳香族化合物の酸化的分解が進行することを明らかにした。反応効率として、ベンセン<クロロベンゼン<m-ジクロロベンゼン~p-ジクロロベンゼン<o-ジクロロベンゼンの順にギ酸生成反応の触媒回転数(TON)が上昇した。さらに、o-ジクロロベンゼンの酸化過程において、モノクロロキノンが中間体として生成することが、反応液のEI-MSスペクトル測定により明らかとなった。また、Pd(II)-NHC錯体とオキソンとの反応において、LPd(II)-OOSO3錯体の生成が、ESI-TOF-MSスペクトル測定により示唆された。さらに、上述のPd(II)-NHC錯体とオキソンの組み合わせに、Ce(IV)塩を助触媒として加えることにより、これまで酸化困難であったフッ化ベンゼン誘導体が酸化的に分解され、ギ酸を生成することが明らかとなった。 2.2.Ru(III)-オキシル錯体の反応性と安定性を向上させるため、NHC配位子となるベンズイミダゾールに2つのクロロ基を導入した新規Ru(II)-NHC錯体を合成した。その錯体を触媒として、水溶液中で、(NH4)2[CeIV(NO3)6]を酸化剤とする基質酸化反応を行った。その結果、触媒活性については、NHC部分の置換基効果はほとんどないことがわかった。 3.金属-オキシル錯体に関する初めての総説をまとめ、Inorganic Chemistry (米国化学会)にViewpointとして発表した(Inorg. Chem. 58(15), 9517-9542 (2019))。この論文は、2019年8月16日に、過去1ヶ月間で最もダウンロードされた論文として紹介された。
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