研究課題/領域番号 |
18K19090
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
佐藤 記一 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (50321906)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | マイクロ流体デバイス / 臓器モデル / 腎臓 / 糸球体 / バイオアッセイ |
研究実績の概要 |
腎臓の糸球体は血液から原尿を濾過する重要な役割を担っており、この濾過障壁はポドサイト、基底膜、糸球体内皮細胞から構成されている。本研究ではマイクロ流体デバイス上に糸球体モデルを構築し、正常な糸球体濾過及び疾患におけるその破綻のメカニズム解明と新規治療法開発への礎とすることを目的とした. 1. デバイスの作製 マイクロ糸球体モデルのためのマイクロデバイスを設計,試作した.ポリジメチルシロキサン(PDMS)を用いて,並行する2本の流路がメンブレンフィルターを介して接している構造のデバイスを作製し,流路径およびメンブレンフィルターの素材,膜厚,孔径,チップ基板と膜の貼り合わせの方法などについて最適化を行った. 2. デバイス上での細胞の共培養法の確立 作製したデバイス内で健常ヒトポドサイト細胞株および健常ヒト糸球体内皮細胞株の培養を試みた.メンブレンフィルターを基底膜に見立て,その表側に内皮細胞,裏側にポドサイトを良好に培養することに成功した.培地組成,培地流速,培養温度,メンブレンフィルターの表面修飾条件などを検討し,培養条件の最適化を行った. 3. マイクロ糸球体モデルを用いた透過性試験法の確立 低分子化合物および血清アルブミンなどタンパク質を血管側流路に添加し,原尿側流路に漏出してきた量をはかることにより透過率を算出することに成功した. 4. 細胞の状態の解析 構築したマイクロモデルについて,細胞形態の顕微観察により,各細胞の状態の解析を行った. 5. 液性因子による腎疾患モデルの開発 糸球体の透過性を亢進させることが知られている液性因子であるPANを糸球体モデルの血管側流路に添加し,その影響を調べた.その結果,細胞形状が変化することを確認し,またタンパク質透過性の亢進を定量的に評価することに成功した.これにより,腎疾患モデルの構築に成功したと結論した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
すでに糸球体正常モデルおよび透過性試験方法を確立することに加え,病態モデルについても一つの系を構築することに成功したため,計画以上に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
すでに流れのある環境下での細胞培養を実現することにより,正常モデルの確立に成功している.実際の体内では血管側から尿側へのろ過圧が発生しているが,これを再現した状態での培養には成功していない.従って,加圧条件下での細胞培養を実現し,さらに細胞の分化状態を改善していくことが次の課題である. また,別の液性因子等を用いた病態モデルの構築や,治療薬のバイオアッセイへの応用の可能性についても検討する予定である.さらに,再現性の高いデータが得られやすいように,誰にでも使いやすいように実験システムを改善していくことも今後の課題のひとつであると考えられる.
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次年度使用額が生じた理由 |
高価な専用培地など培養に関わる消耗品の使用量が当初の見積よりも少なくて済んだため次年度使用額が発生した.次年度には当初計画よりも多くの培養を行う予定であり,そのための消耗品代として使用する計画である.
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