研究実績の概要 |
照射した近赤外光をアップコンバージョン粒子により青色光を放出する現象を用いて,既存の青色光照射により駆動する光制御システムを利用可能であるかどうかを確認するため,培養細胞を用いた検証実験を行った.具体的には,まずアップコンバージョン粒子を含むコラーゲン基板上で光制御システムを導入した細胞を培養した.共焦点顕微鏡観察下で近赤外光レーザー (976 nm, CW) を照射し,青色光駆動光制御システムの駆動を検証した.検証した光制御システムとしては,細胞膜移行システム (iLID/Sspb, CRY2/CIBN), 核内移行システム (LINuS), 細胞膜移行システム(CRY2/CIBN), タンパク質クラスター化システム (CRY2olig) を使用した.その結果,アップコンバージョン粒子を含むコラーゲン基盤上で培養した細胞において青色光駆動光制御システムが近赤外光レーザー照射により駆動することを確認した.さらに近赤外光ファイバーレーザーシステムを利用することで,最大約4 Wの近赤外光 (976 nm)を直径約1 cmの範囲に照射するシステムを構築し,光制御システムによる細胞内シグナル制御を試行した.具体的には,当研究室で開発したAkt光活性化システム (optoAkt),および遺伝子発現制御システム (GAVPO) を用いて検証実験を行った.結果,光制御に伴うAktの活性化,および遺伝子発現を確認できた.また,アップコンバージョン粒子をマウス個体に静脈注射し,各臓器の滞留時間を肝臓スライスの組織染色および蛍光観察により検証した.その結果,肝臓においては導入から24時間後でも安定して滞留していることが確認された.
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