光操作膜タンパク質の肝臓への導入方法として,アデノウイルスによる導入方法を検討した.プロモーター領域とともに光操作膜タンパク質をコードする遺伝子をアデノウイルス発現ベクターに移し替え,ヒト由来HEK293細胞に遺伝子導入した.小スケールから遺伝子導入した細胞の培養を開始し,すべての細胞で細胞変性効果が確認された時点で回収した細胞破砕液を一段階上のスケールで培養した細胞に添加することを繰り返し,十分量のウイルス含有溶液を得た.ウイルス溶液を尾静脈注射でマウスに導入し,数日後に肝臓断片を回収・破砕することで作成したサンプルをWestern blottingで解析したところ,光操作膜タンパク質の発現が確認された.次に,光操作膜タンパク質をアデノウイルスで導入したマウスについて,麻酔下で開腹し露出した肝臓表面に青色LED光を一定時間照射し,肝臓の破砕サンプルを調製した.サンプルをWestern blottingで解析したところ,光照射に伴う光操作膜タンパク質の活性化,および下流分子のリン酸化が確認された.次に,LNPを活用した光操作膜タンパク質の近赤外光による駆動の検証実験として, LNP表面に特定の化合物で表面修飾した粒子をシンガポールNTUのXING教授らと作製し,肝臓に特異的にターゲットできることを実証した.この表面修飾LNPは肝臓に24時間以上滞留すること,また肝臓に一様に分散することを確認した.次に,光操作ツールをウィルスを用いて発現させ,LNPを導入して近赤外光を照射した.結果,レセプターの下流シグナルの活性化が誘導できることをWestern blot等により確認することができた.
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