研究課題/領域番号 |
18K19093
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西林 仁昭 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (40282579)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | アンモニア |
研究実績の概要 |
触媒量のPCP型ピンサー配位子を持つモリブデン錯体存在下、電気化学的に還元可能な化合物であるヨウ化サマリウムを還元剤として利用することで、水やアルコールをプロトン源として用いた触媒的アンモニア生成反応の開発に成功した。本反応は常温常圧の極めて穏和な反応条件下で、極めて高効率、高選択性にアンモニアが生成する画期的な反応系である。モリブデン錯体当たりのアンモニア生成量は4000当量(モリブデン原子当たり)を超え、モリブデン錯体当たりの単位時間当たりのアンモニア生成速度は一分間で120当量を超える値を達成している。アンモニア生成量は従来の反応系と比べて一桁高い値を達成すると共に、アンモニア生成速度は従来の反応系と比べて二桁高い値を達成した。従来の反応系では副生成物として水素ガスの発生が観測されることが多かったが、本反応系では水素ガスの発生は殆ど見られなかった。触媒的アンモニア生成反応が進行した後の反応系中には、中心金属がサマリウムⅡ価からサマリウムⅢ価へと一電子酸化されたサマリウム錯体が生成していることが確認できた。本反応系で化学量論量必要なサマリウム錯体を触媒的アンモニア生成反応後に回収し、電気化学的還元を行い、原料であるヨウ化サマリウムを再生することができれば、間接的に電気化学的手法を利用して触媒的なアンモニア合成反応を開発したことになる。次年度以降は本年度中に得た詳細な実験結果を踏まえて、サマリウム種の回収再利用にについて詳細な検討を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電気化学的還元手法が適用可能な新しい反応系の開発に成功した事は大きな前進である。本質的な電気化学的還元手法による化学量論量必要なヨウ化サマリウムの使用量低減には成功していないが、触媒的アンモニア生成反応後に系中で存在しているサマリウム錯体については単離し同定することに成功している。この回収したサマリウム錯体を還元し還元剤として利用したヨウ化サマリウムとして再利用可能になれば、本質的な問題解決を達成したことになる。次年度はこの本質的な問題について解決を試みる。
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今後の研究の推進方策 |
上記の現在までの進捗状況にも記載したように、本質的な電気化学的還元手法による化学量論量必要なヨウ化サマリウムの使用量低減には成功していないが、触媒的アンモニア生成反応後に系中で存在している幾つかのサマリウム錯体については単離し同定することに成功している。このサマリウム錯体の詳細な構造については単結晶X線結晶構造解析を行い確認することに成功している。この単離に成功したサマリウム錯体の反応性について詳細に検討を行うことで、原料であるヨウ化サマリウムへの再生反応の開発を目指す。最終的には当初の目的にあるように、電気化学的還元手法を利用することで触媒反応系中でのヨウ化サマリウムの再還元・再利用が可能な反応系へと展開を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究実績の概要に記載したように、電気化学的還元手法を適用する対象物がサマリウム錯体をあることが既に明らかになっている。この本研究課題の本質的とも言えるサマリウム錯体の詳細な反応性を検証する為には、大量のサマリウム錯体を合成する必要がある。昨年度までにはこの錯体を大量に合成するルートの確立には至らなかった。次年度に合成ルートを確立した後に、大量合成に必要なサマリウムを購入して、研究目標の速やかな実施を行う。
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