研究実績の概要 |
2019年4月に、PCP型ピンサー配位子を持つモリブデン錯体を触媒として利用する窒素ガスと水からの触媒的アンモニア生成反応が極めて効率的に進行することを明らかにして、一連の研究成果をNature誌に報告した(Y. Ashida, K. Arashiba, K. Nakajima, and Y. Nishibayashi, Nature, 568, 536-540 (2019).)。この反応では化学量論量の二ヨウ化サマリウム(SmI2)を還元剤として利用する必要があった。しかし、本触媒反応に電気化学的還元反応を適用し、反応に使用したヨウ化サマリウムの使用量を低減することができれば、実用化を格段に加速することが可能になる。この研究背景を踏まえて、三ヨウ化サマリウム(SmI3)から二ヨウ化サマリウムへの還元反応をモデル反応として検討を行った。その結果、還元剤として十分な還元力を有するデカメチルコバルトセンを利用することで、定量的に三ヨウ化サマリウムから二ヨウ化サマリウムへの反応が進行することが確認できた。本研究成果は、本研究目標である電気化学的還元反応が達成可能であること示す重要な研究成果である。この実験結果を基にして、三ヨウ化サマリウムから二ヨウ化サマリウムへの電気化学的還元反応の検討を行った。予備的な実験結果として、電解質を存在させない反応系では電気化学的還元反応の進行は全く観測できなかったが、電解質としてイオン性液体を存在させた反応系では電気化学的還元反応の進行を確認することができた。
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