研究実績の概要 |
申請者は近3年間で, 有機溶媒中における超音波処理によりワイヤ繊維一本一本が剥離可能な配位高分子「ジピリンナノワイヤ」の創製を報告した (Chem. Sci. 2015, 2853; JACS 2017, 16024). ジピリンナノワイヤの単結晶また微結晶粉末を有機溶媒中で超音波処理するとチンダル現象を示すナノワイヤ分散液となる. これをHOPG基板にキャストすることで剥離したワイヤ1本1本がAFMにて観測された. その高さは0.7 nmであり, 単核亜鉛錯体モチーフのサイズと合致していることから, 世界最細クラスの単一ナノワイヤである. この種の単一ナノワイヤの剥離挙動は有機ポリマーを含め極めて珍しい. その長さは3 μmを超え, 重合度は少なくとも2400量体にも達する. この特異・オリジナルな系をベースに, 単一鎖AFM, さらには解像度のより優れたSTMを用いたジピリンナノワイヤの観察技術を確立することを目指した. 単なる観察技術に留めず1つの独立した研究に昇華させるため, その測定対象としてランダム共重合構造を有するヘテロジピリンナノワイヤを採用した. 超音波処理したヘテロナノワイヤ分散液をHOPG上にキャストし, 大気下AFMで観察すると長さ2 μmを超える単一ポリマー鎖が観測された. その平均高さは対応するホモナノワイヤの中間に位置しており, 間接的ながらもヘテロナノワイヤのヘテロ構造を観察することに成功した. ヘテロナノワイヤについては, 効率よりワイヤ内励起子ホッピングの存在とその数値シミュレーションによる解析にも成功した.
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