研究課題/領域番号 |
18K19098
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松本 卓也 大阪大学, 理学研究科, 教授 (50229556)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | キャピラリイオン化 / 質量分析 / 原子間力顕微鏡 / 時間分解画像 / 空間分解画像 |
研究実績の概要 |
本研究は、分子種の識別と時間空間分解能を同時に備え、化学反応の追跡が可能な計測手法とし て、「時空間分解マススペクトロスコピー」を開発し、その機能を実証するとともに、本手法に含まれるナノ液体の科学を明ら かにするものである。 平成30年度は、研究の第一段階として、キャピラリを探針として、原子間力顕微鏡と同様にトポグラフ画像を得る装置を開発した。既存のキャピラリ質量分析装置は、キャピラリを振動させながら表面をステップモータで動かして、表面をスキャンする 装置である。これを原子間力顕微鏡のように利用するために、①キャピラリのたわみと振動振幅を検知する光てこ方式の位置センサー、②XYスキャンを行う駆動機構、③z方向の制御を行うための駆動機構を装備した。キャピラリのたわみ検出には、AFMと同様の反射型の光てこでは、キャピラリが曲面を持つため、反射方向の再現性に問題があった。そこで、レーザー光路を遮るかたちでキャピラリを設置し、キャピラリの影を用いた制御システムを考案した。開発した装置を用いて、キャピラリを探針として、原子間力顕微鏡と同様にフォースカーブの測定を行った。その結果、液架橋の形成に伴う力を観測することに成功した。溶液の種類を変え、 液架橋の形成と表面張力 、粘性、表面分極について解析を行った。さらに、質量分析のイオン化がキャピラリの運動のどのタイミングで起こるのかについて調べ、液架橋形成後に時間が必要なことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度予定してた、キャピラリイオン化質量分析装置を原子間力顕微鏡として動作させるための基礎的な枠組みを完成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
時間分解マススペクトロスコピーの実現を目指して、2019年度はデモンストレーションに適した化学系の探索を行う。レーザー光1パルスの光励起により、効率的に1~数ミリ秒程度の寿命を持つ化学種が生成する系を選ぶ。まず、酸化チタンのマイクロメートルレベルのパターニングを行った表面に、反応物の濃厚溶液を担持し、光照射による反応を調べる。TiO2のパターニングは、金属マスクやLEDリソグラフィを用いる簡便な方法を用いる。短寿命化学種を経て最終生成物の生成量をしらべることにより、時間分解マススペクトロスコピーで検出できる濃度が得られるか検討する。最終生成物の定量はNMRを用いて行い、量子効率を求めることで、時間分解マススペクトロスコピーの実現可能性について調査を行う。 一方、時間分解計測を行うための装置の整備を昨年度に継続して行っていく。光励起パルスとキャピラリの運動を検出するためのレーザーシステムの干渉を排除するために、波長フィルタを設置する。キャピラリの振動と反応励起用のレーザー光照射を同期するためのエレクトロニクスを整備する。
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次年度使用額が生じた理由 |
基金の趣旨に則り、無理に少額物品を購入して数字合わせを行う無益な作業をしなかったから。
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