研究課題
ラマン分光法は種々の物質の構造や状態などに関する豊富な情報を与えるうえ、直線偏光を用いれば分子の配向を解析することも可能である。今年度は、顕微偏光ラマン分光装置を新たに試作して、結晶における高分子鎖の配向の解析に応用した。倒立型顕微鏡をベースに、Nd:YAGレーザー(532nm)と分光器・冷却CCD検出器、原子間顕微鏡(AFM)ヘッド、ピエゾステージ等を取り付けて試作した装置では、試料の同じ位置で偏光顕微鏡(POM)像、AFM像の観察と偏光ラマンマッピング測定を行なうことができる。また、 正立型顕微鏡にレーザー、検出器、自動回転ステージおよび自動XYステージを取り付けて開発した装置では、角度分解偏光ラマン測定により各振動モードのラマンテンソルの成分と分子の傾きを解析することができる。ポリエチレン球晶の解析では、POM像に観察される消光リングの明線部において、AFMトポグラフィー像の高度が高く、偏光ラマンスペクトルのC-C伸縮バンドの強度が高く、CH2伸縮バンドの強度が低いことより、ラメラがEdge-onの状態であり、主鎖が試料面に対して平行かつ球晶の接線方向に配向していることを明らかにした。ポリカプロラクトンのリング構造および非リング構造の球晶の解析では、高分子鎖の分子軸まわりの回転角であるφが、非リング球晶とリング球晶で100~110°であり同程度回転していることを明らかにした。一方、高分子鎖の試料面に対する傾きであるθは、非リング球晶ではどの位置においても約90°でありラメラがFlat-onの状態で回転していないのに対して、リング球晶では暗線部で90°、明線部では27°であり、ラメラが回転しながら中心から放射状に成長していることを明らかにした。
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Journal of Fiber Science and Technology
巻: 77 ページ: 223~230
10.2115/fiberst.2021-0024