研究課題/領域番号 |
18K19111
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
宮武 健治 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (50277761)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | ポリフェニレン / イオノマー / 高分子薄膜 / イオン伝導 |
研究実績の概要 |
ポリフェニレンイオノマーの合成反応を検討した。具体的には、m-位およびp-位にジクロロ基が結合したビフェニルの組成を変化させてスルホジクロロベンゼンとの共重合反応を実施した。得られた重合体(SPP-BP)の共重合組成比をパラメータとして、イオン交換容量(IEC)、分子量、溶解性、成膜性を測定した。p-体のみから成るSPP-BPは有機溶媒に不溶であったが、m-体の組成増加に伴って溶解性は向上し、m-/p- = 4/1 以上の組成においてジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒に完全に溶解した。1H NMRスペクトルにおいて芳香族のプロトンピークは十分な帰属が不可能であったため、m-/p- 組成を求めることはできなかった。他方、スルホフェニレンの組成から求められるIECはモノマーの仕込み組成から求められる値に比べてやや低い値(約80-86%程度)であったことから、スルホジクロロベンゼンはジクロロビフェニルと比較して、やや反応性が低いものと思われる。SPP-BPの分子量は、m-/p- = 4/1の組成で最大(Mw = 114 kDa, Mn = 26 kDa)であった。さらにm- 体組成を増加させると分子量は低下したが、これは立体障害により反応が進行しにくくなったためであると思われる。m-/p- = 4/1の組成のSPP-BPから得られた薄膜は同じm-/p- 組成を持ち、ジクロロキンケフェニレンから合成したポリフェニレンイオノマー(SPP-QP)膜と同様に柔軟かつ強靭であった。SPP-BP膜はSPP-QP膜と比較して含水率は同程度であったが、プロトン導電率はやや低い値を示した。これは疎水部単位構造が小さくなったため、疎水部および親水部の連続性(ブロック共重合性)が低下し、イオンチャンネルの形成や連続性が損なわれたためであると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画した通り、共重合組成比がポリフェニレンイオノマーの重合反応や薄膜物性に及ぼす効果を明らかにすることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに、ジクロロビフェニルモノマーを用いてポリフェニレンイオノマーにおける共重合組成比及ぼす効果を明確にすることができた。今年度はこの効果をより詳細に検討するために、さらに小さなジクロロモノマー(ジクロロベンゼン)を用いてスルホジクロロベンゼンとの共重合反応を行う。具体的には、キンケフェニレンモノマーやジクロロビフェニルに変えてp-およびm-ジクロロベンゼンを用いて同様に重合反応を行い、m:p フェニレン組成比やその配列の違いが、得られる重合体の物性に及ぼす効果を明らかにする。これらの実験結果からポリフェニレンイオノマーの新規合成法を確立すると共に、薄膜としての基礎物性を制御する方法論を確立する。 さらにこれらの研究成果として得られる最適化したm:p フェニレン組成比およびその配列を有する主鎖構造を、アンモニウム基を有する塩基型ポリフェニレンにも展開する。酸型と塩基型で重合条件は若干の最適化のみで対応できることが予想されるため、短期間で同様の主鎖構造を有するアニオン導電性ポリフェニレンを得ることができる。酸型と同様に分子量、溶媒溶解性、成膜性とm:p フェニレン組成比およびIECの相関を明らかにするとともに、薄膜物性を評価する系を選定する。選定した酸型および塩基型ポリフェニレンイオノマー薄膜は、特に燃料電池への応用を想定した各種物性を測定することにより、イオン導電性高分子材料としてのポリフェニレンイオノマーのポテンシャルを正確に評価する。
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