研究課題/領域番号 |
18K19113
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
浦山 健治 京都工芸繊維大学, 材料化学系, 教授 (20263147)
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研究分担者 |
鈴木 大介 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (90547019)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | ゲル / ゲル微粒子 / 温度応答性 |
研究実績の概要 |
(1) 温度応答性Nイソプロピルアクリルアミドのゲル微粒子を合成し,ゲル微粒子が超高充填された懸濁液(ペースト)の温度応答特性を調べ,相転移温度以上でのコロイドゲル化挙動を詳細に調べた。また,(2) ペースト中にアクリルアミドモノマーと架橋剤を溶解させ,ゲル微粒子が高充填された化学架橋コンポジットゲルを作製し,同ゲルの大変形挙動および水中でのゲル体積の温度応答性を調べた。 (1)について,相転移温度以上の収縮相では,表面電荷密度が高い場合,懸濁液中のゲル微粒子は分散状態にあり低粘度液体として挙動した。表面電荷が遮蔽されると,懸濁液はコロイドゲルを形成し,遮蔽度の増加とともにゲルの弾性率は増加した。表面電荷密度はpHおよび塩添加によって可変でき,pH,イオン強度の変化に対して同様の挙動が観察された。 (2)について,コンポジットゲルの弾性率は微粒子の充填率とともに増加したが,充填されていないマトリックスゲルとペーストの弾性率の単純和よりも大きくなった。これはゲル微粒子中をマトリックスゲルの網目鎖が貫通することによる絡み合い構造が弾性率に寄与していることを示している。コンポジットゲルの体積の温度応答特性では,Nイソプロピルアクリルアミドのバルクゲルに対して,応答速度の有意な上昇はみられなかった。コンポジットゲルの温度応答性はゲル微粒子によってもたらされるが,マクロな体積変化には非温度応答性のゲル網目も関与するためと考えられる。しかし,バルクゲルでは収縮過程では表面スキン層の形成によって膨潤過程よりも速度が遅延される傾向がみられるのに対し,コンポジットゲルでは逆に収縮過程が膨潤過程に比べて加速される傾向が観察された。コンポジットゲルではゲル表面のほとんどが非温度応答性高分子で形成されているため,スキン層が形成されないためと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
温度応答性ゲル微粒子が高充填されたコンポジットゲルの合成スキームを確立することができた。また,このコンポジットゲルの力学特性および膨潤特性を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
コンポジットゲルのマトリックス網目も温度応答性高分子とすることで,ゲル体積の温度応答速度を向上させられる可能性がある。このためには,コンポジットゲルの合成時の温度および粒子濃度を再検討する必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
マトリックスゲルを温度応答性高分子とする合成の検討が遅れ,使用試薬などの購入がされていないため
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