研究実績の概要 |
報告者は,DMFにより配位安定化されたPd NCsを触媒に用いる薗頭-萩原カップリング重合,溝呂木-Heckカップリング重合を検討し,数平均分子量数万~数十万のポリフェニレンエチニレン, ポリフェニレンビニレンを高収率で合成することに成功している[Macromolecules 50, 4083-4087 (2017)]。優れた触媒活性を有するPd NCsと,光電気的特性 を示す共役高分子である置換ポリアセチレンの複合体の報告例はこれまで全くなく,その性質と特徴は触媒化学・有機金属化学・材料科学の観点から興味深い。 2019年度は,Pd NCsを配位したpoly(4-ethynylaniline) [poly(1)⊃Pd NCs]を,ルートA, B, Cでそれぞれ調製した。A: 1とPd NCsを配位させ,Rh触媒で重合,B: Boc基で保護した1を重合し,脱保護した後,Pd NCsを配位, C: Fmoc基で保護した1を重合し,脱保護した後,Pd NCsを配位。poly(1)⊃Pd NCsのXPS測定において,poly(1)⊃Pd NCs-A, B, CのN 1sのピークは,poly(1)よりも高結合エネルギー側に観測されたことから,poly(1)のアミノ基のPd NCsへの配位が示唆された。また,Pd 3dのスペクトルより,Pd NCsの大部分はPd(0)であるのに対し,poly(1)⊃Pd NCs-A, B, CのPd は,酸化されていることが確認できた。 [poly(1)⊃Pd NCs]-A, B, Cを触媒としてヨードベンゼンとフェニルボロン酸の鈴木-宮浦カップリング反応によるビフェニル(4)の合成を検討した。ルートA, Bの触媒は定量的に,ルートCの触媒は80%の収率で生成物を与えた。
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