研究課題/領域番号 |
18K19123
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
雨澤 浩史 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (90263136)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | CT-XAFS / オペランド / 蓄電池 |
研究実績の概要 |
本研究では,リチウムイオン二次電池の電極における充電深度(SOC)を、電池作動下で実験的にオペランド評価することのできる手法として,「オペランド電気化学コンピュータ断層撮影X線吸収微細構造(オペランド電気化学CT-XAFS)」の開発を行った。本研究では,まず,ラミネート型リチウムイオン二次電池を用いた実験を想定し,上述のCT-XAFS測定を可能とする試料ホルダの開発を行った。XAFS測定では,放射光アンジュレータビームラインで得られる高輝度のX線を利用し,かつ,入射X線のエネルギー操作範囲を特定元素の吸収端近傍の数eVの範囲に限定することで,短時間でのオペランド評価を可能とした。一つの入射X線エネルギーにおいて,回転角度:-70~70度,回転角度幅:0.2度,1エネルギーでの画像取得時間:20秒の条件でX線CT測定を行い,吸収係数の三次元再構成像を得た。これを入射X線エネルギーを変えながら繰り返すことで,各空間領域のXANESスペクトルを得,そのエネルギーシフトから各空間領域のSOCを定量評価した。以上の手法改良により,これまでの仕様を大幅に向上させる,位置分解能:約4マイクロメートル,時間分解能:約25分でのオペランド計測を実現する技術の確立に成功した。さらに,この技術を,バルク型全固体リチウムイオン電池LiCoO2 (LCO)-Li2.2C0.8B0.2O3 (LCBO)|LCBO|PEO|Liに適用し,同電池のLCO-LCBO合剤正極における反応の進展評価を行った。その結果,合剤正極における充電深度の三次元位置分布のオペランド計測に成功した。以上の結果は,実用に近い蓄電池電極における反応分布を三次元で実験的に評価した,初めての研究例である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では,非接触・非破壊,リアルタイムで,蓄電池の反応分布を,3次元かつ高い位置分解能(数μm),時間分解能(数10分以下)で追跡できる「オペランド電気化学コンピュータ断層撮影X線吸収微細構造(オペランド電気化学CT-XAFS)」法の確立を目指していた。これに対し,今年度の研究により,位置分解能:約4マイクロメートル,時間分解能:約25分でのオペランド計測を実現するCT-XAFS技術を確立した。また,この技術をバルク型全固体リチウムイオン電池に適用し,同電池の合剤電極における三次元反応分布をオペランド計測することに成功した。以上は,当研究課題の当初目的を概ね達成する成果であり,初年度の計画以上に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究を通し,当初目指していた,位置分解能,時間分解能をほぼ実現するオペランドCT-XAFS計測技術を確立することができた。この成果をベースに,次年度は,更に高い位置分解能,時間分解能を可能とするCT-XAFS技術の開発を継続して実施する。位置分解能の向上は,従来の透過型CT法に代わり,より高位置分解能が期待できる結像型CTの適用を検討することで行う。時間分解能の向上は,入射エネルギーを一定エネルギー範囲で走査するのではなく,特徴的なエネルギー数点を測定することにより,SOCを評価する手法を開発することで行う。さらに,開発された手法を全固体リチウムイオン二次電池の合剤正極における反応分布形成挙動の直接観察に適用し,反応分布の形成要因について検討を行う。これにより,高レート,高出力特性を達成する全固体リチウムイオン二次電池用電極の設計指針を与える学術的知見を得る。
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