研究課題
本研究では,Li二次電池の電極における充電深度(SOC)を、電池作動下で実験的にオペランド評価することのできる手法として,「オペランド電気化学コンピュータ断層撮影X線吸収微細構造(オペランド電気化学CT-XAFS)測定」の開発を行った。一年目は,まず,ラミネート型Liイオン二次電池を用いた実験を想定し,上述のCT-XAFS測定を可能とする試料ホルダの開発を行った。XAFS測定では,放射光アンジュレータビームラインで得られる高輝度のX線を利用し,かつ,入射X線のエネルギー操作範囲を特定元素の吸収端近傍の数eVの範囲に限定することで,短時間でのオペランド計測を可能とした。この技術を,バルク型全固体Liイオン電池LiCoO2 (LCO)-Li2.2C0.8B0.2O3 (LCBO)|LCBO|PEO|Liに適用することで,同電池の合材正極におけるSOCを3次元で定量できる手法の確立に成功した。この際の位置分解能,時間分解能は,それぞれ,約4マイクロメートル,約25分であった。二年目は,CT測定の手法を,上述の技術に,ゾーンプレートで構成される X 線結像光学系を適用させることにより,さらに位置分解能を向上させたオペランド電気化学CT-XAFS法の開発に取り組んだ。その結果,時間分解能は約3~4時間となるものの,位置分解能は約100-200ナノメートルに向上させることができた。この手法を,上述の全固体電池に適用することで,その実用性について検証した。これにより,合材中に含まれる電極活物質(典型的な粒子サイズは数マイクロメートル)を分離した,三次元反応分布評価が原理的に可能であることが示された。以上の結果は,実用電極におけるSOC(反応)分布を,高い位置分解能でオペランドかつ三次元で実験的に評価した,初めての研究例であり,電池の高性能化を図るための有用な手法となることが期待される。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 5件、 招待講演 4件)
J. Phys. Chem. Lett.
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