研究課題
本研究目的である、分極反転時に発生する電流を動力とする発電機構の開発の一環として、2年目はPZT以外における強誘電体の分極反転とc/aの関係性を明らかにするために様々な正方晶性を有する材料の作製とその分極反転測定を行った。取り扱った強誘電体材料は2013年度に発見したBi(Zn1/2Ti1/2)O3を母相にした正方晶ペロブスカイト型酸化物である。これらの材料の組成及び歪み(基板や膜厚によって)をチューニングして、それらの正方晶性(c/a)をコントロールした。主に組成によってc/aをコントロールすることを可能とし、その組成はxBi(Zn1/2Ti1/2)O3-yBi(Mg1/2Ti1/2)O3-zBiFeO3で表すことができる。zを1/3に固定することで、xとyの比率を変化させた結果、yを増加させるに従ってc/aは1.2から1.06まで減少させることに成功した。また、作製した様々なc/aを有する薄膜の分極反転はc/aが1.1以下の時に顕著に現れた。今まで様々なペロブスカイト型構造強誘電体材料を調査した結果、c/aが1.1を超えるもので分極反転を示した系は非常に少ない。これは分極反転に必要なエネルギーが材料を保持するエネルギーを超えるために、材料の破壊が先に起きるためであると考えられる。従って、環境による外場、ここでは応力を示すが、それによって分極反転を起こすためにはc/aができるだけ小さい方がよいが、小さすぎると反転電流が小さくなると予想されるために材料破壊が起きるギリギリのc/aにチューニングする必要性が求められると予想できる。
2: おおむね順調に進展している
2年目は分極反転と材料の分極反転エネルギーに直結する値である正方晶性c/aの関係性について議論することができた。最終年度に様々な分極反転エネルギーを有する薄膜を用いて外場による分極反転とその外場の大きさの関係性について検討できるところまで研究が進行したために、当初計画した通り概ね順調に進展していると判断した。
当初の研究計画通りに予定通りに実験を進めていく。最終年度は外場(応力)により分極反転を試み、反転に必要なエネルギーと材料定数について定量的に議論する予定である。
当該年度に購入予定していた消耗品である単結晶基板について、当初予定していたよりも購入費が少なくすんだため。また、予定していた旅費の使用も不要になったため。使用計画として、延期された国際会議の旅費および試薬等の消耗品に使用する予定である。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (53件) (うち国際学会 26件、 招待講演 5件) 図書 (1件) 備考 (1件)
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