研究課題
形状異方性を有する半導体ナノ粒子(量子ドット)は、その結晶の形状や露出する結晶格子面の種類に依存した光触媒活性を示す。本研究では、高効率な太陽光利用を目指して近赤外光領域にエネルギーギャップ(Eg)をもつZnSe-AgInSe2(ZAISe)固溶体半導体に着目し、その形状異方性を制御して、水素生成光触媒活性に及ぼす影響を評価した。異方形状ZAISeナノ粒子は、対応する金属酢酸塩とセレノウレアをオレイルアミン中に溶解させ、100~250℃で加熱することによって合成した。粒子表面を親水性チオールで化学修飾することによりZAISeナノ粒子を親水化して光触媒とし、水素発生反応の光触媒活性を評価した。得られたZAISeナノ粒子はロッド形状であり、その長軸は粒子のZn含有率の増加とともに10 nmから100 nmへと増加したが、短軸は粒子組成に関わらす4~7 nmとほぼ一定であった。ロッド形状ZAISeナノ粒子の吸収スペクトルは、粒子中のZn含有率が増大するにつれて、吸収短波長が900 nmから500 nmへと短波長シフトした。このことから、粒子組成制御によってZAISeナノ粒子のEgを可視光から近赤外光領域の間で自在に制御できることがわかる。異なる粒子形状をもつZAISeナノ粒子にRh粒子を担持させてヘテロ接合粒子を作製し、その光触媒活性を評価した。水素発生量は光照射時間とともに増大し、いずれの組成および形状をもつZAISeナノ粒子においても光触媒として安定に働くことを見出した。しかし、水素発生速度は形状に依存して大きく変化し、球状粒子よりもロッド形状粒子の方が、約2倍高い光触媒活性を示した。これは、ロッド形状粒子表面に露出した結晶面に結晶欠陥が少ないこと、およびロッド粒子内部の空間的な組成変化によって電荷分離効率が向上したことによる。
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