本研究は、これまで常圧の液相からは合成例のないダイヤモンドを、高温溶融塩中において常圧で電解合成することを目的としている。前年度の結果により、K2CO3を従来より低い濃度として最適化されたLiCl-KCl-K2CO3-KOH系を基本として実験を行った。従来の基板準備法としては、直径約1μmのダイヤモンドパウダーを使用して手作業で傷つけ処理を行っていが、この方法は再現性や処理速度に課題があった。そこで、再現性・処理速度に優れ、ダイヤモンド核発生の促進も期待できる「ナノダイヤモンドパウダーを用いた超音波処理」により基板を準備した。この方法によりNi基板を準備し、700℃の浴中、1.1 V vs. Li+/Li付近の複数の電位で定電位電解により試料を作成した。その結果、1.10 V vs. Li+/Liにおける試料について、顕微ラマン分光によりダイヤモンドの生成を確認した。さらに、SEM/EDX分析の結果、最大粒径約2μmの角ばったダイヤモンドを確認した。次に、浴温度を650℃および750℃と変化させて同様の検討を行った。その結果、650℃ではダイヤモンドの生成を確認したが、750℃では確認されなかった。750℃についてはさらなる電解条件の最適化が必要と考えられる。最後に、炭素源としてCO2、水素源としてH2Oを用いる予備検討を行った。初期的な実験は行えたが、より定量的な実験を行うためには、ガスライン等を組み直す必要があることが分かった。
|