ヒト由来の嫌気性細菌は、腫瘍周辺環境の嫌気的環境で増殖する性質を持つため、プロドラッグ-酵素療法の遺伝子のベクターとして注目を集めている。しかし、複雑な骨格の低分子生産システムを持つ微生物における遺伝子クラスターの発現の手法が、ガン治療に応用された例は未だ存在しない。本研究では、ヒト由来の嫌気性細菌であるビフィズス菌Bifidobacteriumを宿主として抗ガン化合物の生合成遺伝子発現システムを構築する。また、疾病治療を目的として、ヒト由来細菌代謝物の構造決定、機能解明に取り組む。ヒト感染性放線菌であり、ノカルディア症の原因菌であるNocardia属細菌の代謝物解析を行い、その中から、新規芳香族化合物4種の生理作用について精査し、これらの抗酸化作用を示した。また、その推定生合成酵素遺伝子を同定した。C-配糖体であるpuerarin のC-配糖体結合はBacteroides sp. によって開裂することがこれまでに判明していたが、その詳細な触媒メカニズムは未知であり、今後のヒト体内での阻害剤などの活性コントロール、酵素の構造解析、酵素の基質エンジニアリングによる新規物質生産のために、酵素の立体構造解析を行った。結晶化、クライオ電子顕微鏡解析により、その反応機構、酵素の構造解析を進め、様々なC-配糖体に対する基質特異性試験、酵素の構造情報から、還元的C-C結合開裂の反応機構を明らかにした。
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