研究実績の概要 |
本研究では、エクテナサイジン類やサフラマイシン類の優れた分子認識能力・細胞制御機能を活用し、特定の三次元構造/塩基配列を有する DNA や RNA を認識し可逆的に共有結合を形成する中分子群を設計・合成する。芳香環や側鎖1位の構成アミノ酸ユニットを改変し、タンパク質相互作用部位を導入する骨格多様化合成プロセスを開発する。これらのアプローチを統合し、アルカロイド-核酸複合体を駆使してタンパク質の相互作用を制御するケミカルバイオロジー研究を展開する。 天然から単離されたTHIQアルカロイドは五環性骨格の両端にキノンまたはヒドロキノン構造を有する。一方、筆者らが確立した化学-酵素ハイブリッド合成法(J. Am. Chem. Soc. 2018)では、五環性骨格の両端をいずれもフェノール型とした非天然型類縁体の短段階合成が可能である。本研究では、我々が開発したハイブリッド連続合成プロセスで迅速合成した新規リガンド群のDNAアルキル化能を調査した。種々の配列を有する15塩基対のDNA二重鎖に対して合成リガンドを作用させ電気泳動により解析した。その結果、合成リガンドが配列選択的にDNAをアルキル化することを明らかにした。キノン構造を有する天然物との比較から、より広範な配列選択性を有することが示唆された。また、合成リガンド群の五環性骨格1位に種々の置換基を導入し、リガンド構造とDNAアルキル化能との相関を検討した。立体障害の大きな置換基や長鎖アルキル基を1位側鎖に導入すると、THIQアルカロイド類のDNAアルキル化が著しく阻害されることが分かった(Bioorg. Med. Chem. Lett. 2019, Nat. Prod. Rep. 2020)。
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