アルツハイマー病発症の鍵をにぎるアミロイドファイバーの形成過程は、国内外の研究者によって精力的に研究が進められている。特に、超高齢化が進む日本では、大きな社会的問題の一つとなっており大変注目されているものの、分子レベルでの機構解明は未だに達成されていない。最近では、少数のアミロイドベータペプチド単量体(Ab)からなるAbオリゴマーが、Abファイバー形成時に比べ高い毒性を持つことが報告されており、単量体からファイバー形成への中間反応となるオリゴマー形成プロセスの理解が重要かつ緊急な課題となっている。しかしながら、42残基からなるAb42)が高い凝集性を有することから、特定のオリゴマーの単離、溶解が困難であり、現状では、化学的な修飾を施した10-20残基程度のAbのフラグメントを調製し、X線結晶構造解析や固体NMRによる静的な構造決定が達成されているのみである。従って、アミロイド研究では、全長のAbオリゴマーの原子レベルの構造決定に加え、オリゴマー形成からファイバー形成反応までの動的な挙動を追跡できる手法の開発が強く求められている。本研究では、オリゴマー形成過程の全容解明に向けた革新的な手法として、Ab42の凝集や溶解性の問題を解決するため、蛋白質ケージへの内包を利用したAb42オリゴマーの孤立化手法を確立し、様々なフラグメントをタンパク質ケージ内に集合させることに成功した。さらに、HSAFMによってそのオリゴマーの直接観察に成功した。
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