研究課題
細胞膜にはスフィンゴミエリン(SM)とコレステロールに富んだ脂質ラフトと呼ばれる微小領域が存在する。脂質ラフトは、周囲の細胞膜よりも硬い相状態を有し、各種タンパク質が特異的に集積することでシグナル伝達の“足場”として機能していると考えられている。しかし、ラフト形成の生理的意義や重要性については必ずしも明確になっていない。そこで、酵素などのタンパク質の阻害剤と同様に、ラフト形成を阻害する「ラフト阻害剤」を見いだせれば、ラフトの機能や性質を探索する分子プローブとして利用できると考えた。本研究では、「ラフト阻害剤」のアッセイ法の開発とラフト阻害剤の探索を行うことを第一の目的とする。次にこのラフト阻害剤を分子プローブとしてラフト研究に供することで、ラフト形成の生理的意義を明確化する。すでに我々は、ラフトに集積する蛍光SMを開発した(J.Cell Biol.2017)。さらに、ラフトに存在する蛍光SM同士の間で脂質間蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)が観察されることを見出した(Sci.Rep.2017)。昨年度、この脂質間FRETを利用することで、以下のラフト阻害アッセイ法を構築した。すなわち、ラフト相に集積する蛍光SMと非ラフト相に集積する蛍光脂質をFRETペアとし、ラフト阻害剤によりラフトが解消されることによって両者が近づくと脂質間FRETが増加する。これによりラフト阻害剤の探索が可能となった。本年度は、このアッセイ法を96穴マイクロプレートリーダーに適用することで、ハイスループット化に成功した。これにより新たなラフト阻害剤候補化合物を見出すことができた。さらに、これまでのアッセイ法開発は人工脂質膜を用いてきたが、ラフトが存在することが知られている赤血球膜を用いたラフト阻害アッセイ法の開発にも成功した。これにより、生体膜を用いたラフト阻害剤探索研究も可能となった。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 11件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件) 備考 (1件)
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