研究実績の概要 |
本研究の目的は、分野融合型-有機化学を起点に、新規骨格を有する生物活性シードを創出することである。特に、不斉点や四置換炭素を内包した複素環化合物の合成法の開拓と生物活性評価に焦点を当てる。複素環化合物は承認薬の59%を占めるが (J. Med. Chem. 2014, 57, 10257)、連続不斉点や四置換炭素を内包した複素環化合物はその合成の難しさから十分な活性評価がなされていない。そこでこれまで申請者の研究グループが蓄積してきた知見を基盤として、『1. 独自の触媒反応による小規模化合物ライブラリーの構築 』、『2. 生物活性評価』を推進する。
まず、これまでに開発した触媒反応により供給される複素環化合物群をライブラリー化した (Nat. Commun. 2017, 8 , 14875; J. Am. Chem. Soc. 2017, 139, 8661; Heterocycles, 2017, 95, 1030; Chem. Commun. 2016, 52, 14903)。すなわち 、これらの化合物ライブラリーについてストック溶液の調整を行った。また、既に確立している触媒反応については電子及び立体構造に着眼した独自の基質展開・多官能基化を行うとともに、新規触媒反応の開発にも取りくみ化合物群が構築するケミカルスペースを拡張することができた。更に、得られた新規化合物については、各種スペクトル解析、DFT計算により、その固体及び溶液中での三次元構造についての知見も得ることができた。これらの一部の化合物については、理研の所有するNPDepoに寄託することで、これらの新規化合物群に潜在的に秘められた様々な生物活性の検証を進めている。またスループットは高くないもののタンパク質メチル化反応のプロテオーム解析についても、阻害活性を評価するための独自の系を確立することもできた。
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