研究課題/領域番号 |
18K19165
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
妹尾 啓史 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (40206652)
|
研究分担者 |
伊藤 英臣 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (70748425)
|
研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
|
キーワード | 生物的窒素固定 / 鉄還元菌 / Anaeromyxobacter / 窒素固定活性 / 土壌圏 |
研究実績の概要 |
生物的窒素固定は生態系を支える重要な反応である。我々は最近、水田土壌のメタトランスクリプトーム解析から、土壌に豊富な鉄還元菌こそが水田の窒素固定を担う鍵微生物であるという新知見を得た。この鉄還元菌は土壌圏に広く分布しているため、鉄還元菌による窒素固定が陸域全体における普遍的事象である可能性が高いと考えられた。この概念を検証する有力なアプローチとして、分離菌株を用いた検証は必須である。これまでに分離・解析を行ったGeobacter属の鉄還元細菌に加えて、Anaeromyxobacter属の鉄還元細菌の解析を進めた。 Anaeromyxobacter属細菌は7株が得られ、全て水田土壌から単離された。このうちの3株のゲノムを解読したところ、全ての株において窒素固定遺伝子がコードされていた。また、窒素ガスを唯一の窒素源として生育できること、その際に窒素固定遺伝子の転写量が上昇することが分かった。また、滅菌した土壌にこのAnaeromyxobacter属細菌を接種したところ、土壌の窒素固定活性が上層するとともに、土壌中でのAnaeromyxobacter属細菌の増殖も確認された。 以上のことから、Anaermyxobacter属細菌は窒素固定活性を有すること、土壌中で窒素固定能を発揮できることが明らかとなった。Anaeromyxobacter属細菌の窒素固定能を活性レベルで証明した例は世界で初めてである。 この成果は、土壌圏に普遍的に生息しており、窒素固定遺伝子が高頻度に検出される鉄還元菌Anaeromyxobacterが実際に窒素固定活性を有することを証明したものであり、鉄還元菌による窒素固定の重要な証拠を得ることができた。
|