概日時計は分子から個体の各階層を時間・空間的に統合して多様な生理現象の日内リズムを生み出す。申請者はケミカルバイオロジーの手法を応用し、概日リズムの周期を変化させる新規化合物を発見して鍵となる制御機構を明らかにしてきた。一方、核内受容体REV-ERBαの生化学的な解析から、この因子のリン酸化を介した分解調節が概日リズムの振幅に影響することを見出した。振幅は肥満や老化によって減少し、生理機能の調節における重要性が知られているものの、分子レベルの理解が遅れている。本研究では振幅を増加させる新規化合物を見出し、標的タンパク質の同定と解析から振幅制御の理解に突破口を開くとともに、肥満や老化に応用する起点とする。本年度は、同定した化合物の誘導体の効果を解析して振幅調節に必要な部位を明らかにした。さらに、化合物の作用解析から標的タンパク質の候補を絞り込んだ。このタンパク質に対する既知の阻害剤ならびに遺伝子ノックダウンがともにルシフェラーゼレポーターリズムの振幅を増加させたことから、見出した化合物はこのタンパク質に対する新規の阻害剤であると考えられる。並行して、概日リズムの周期延長と振幅増加を引き起こす化合物として以前に見出したlongdaysinを用い、ケージド化合物を開発した。この化合物は暗条件では活性をもたず、紫色光の照射によって活性化し、標的タンパク質であるCKIを阻害した。この化合物を用い、濃度および光照射時間に依存して精密に概日リズムを制御することに成功した。
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