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水酸化脂肪酸は機能性素材として食品や化成品分野を含む幅広い分野で注目されている。水酸化脂肪酸は水酸基および二重結合の位置や数ならびに炭素鎖長により機能性が異なることから、求める水酸化脂肪酸の選択的合成法の確立が求められている。しかしながら、化学合成法は水酸基の位置や立体の制御が困難であり、加えて、多価不飽和脂肪酸は酸化を受けやすく、分子状酸素を酸素供与体とする水酸化酵素の利用も難しい。一方で、脂肪酸水和酵素は嫌気雰囲気下で立体および位置選択的に不飽和脂肪酸に水酸基を導入することができる。そこで、本研究では水酸化脂肪酸のオンデマンド合成を可能とする脂肪酸水和酵素のライブラリー化を試みた。
本年度は触媒残基への変異導入による基質特異性の改変、および、in silico解析で得られた脂肪酸水和酵素の評価を実施した。申請者らが報告したLactobacillus acidophilus NTV001株が有する2種類の脂肪酸水和酵素［FA-HY1（リノール酸の13位に水酸基を導入）およびFA-HY2（リノール酸の10位に水酸基を導入）］をモデルとして、推定した触媒残基に対して変異を導入し基質特異性の改変を試みた。その結果、FA-HY2の基質特異性を改変し、リノール酸に対し13位へ水酸基を導入する変異酵素の作出に成功した。加えて、in silico解析を用いて不飽和脂肪酸に対して水酸基を導入する真菌由来脂肪酸水和酵素の取得に成功した。
前年度では、長鎖不飽和脂肪酸に対して高い親和性を有する新規脂肪酸水和酵素を同定し、さらに、新規水酸化脂肪酸の合成に成功した。すなわち、本研究により、水酸化脂肪酸のオンデマンド合成に向けた脂肪酸水和酵素ライブラリーの基盤を築くことができた。
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