研究実績の概要 |
令和3年度は主に以下の2項目について重点的に研究を実施した。 1. 外来遺伝子の導入による脂質生産に関わる新規遺伝子の探索 これまでにネオマイシン耐性遺伝子の導入によるランダムスクリーニングにより、幾つかの脂質生産に変化がある株を取得している。本年度はその中で、ミトコンドリアのβ酸化に関与するタンパク質(electron-transfer flavoprotein ubiquinone oxidoreductase, ETFQO)の機能不全により、ミリスチン酸が消失する株(ETFQO変異株)の解析を詳細に行った。その結果、ETFQO変異株は、培地にグルコースが十分に存在する条件では、グルコースを優先的に利用して生育するが、グルコースが枯渇すると代わりの栄養源となる長鎖脂肪酸が利用できないために、細胞が生育できなくなることが分かった。また、ETFQO変異株ではβ酸化が停止するために細胞内にアシルCoAが蓄積していることも明らかになった。一方、ETFQO変異株では、β酸化によって分解されることが知られているバリンやイソロイシンのような分岐アミノ酸の分解が途中で止まり、中間産物の短鎖脂肪酸が培地中に放出されることで、培地中のpHが低下することも分かった。 2. ラビリンチュラ類のゲノム編集 ラビリンチュラ類のゲノム編集に関しては、これまでにCRISPR/Cas9システムを適用することでAurantiochytrium limacinumのゲノム編集に成功していたので、ガイドRNAとCas9タンパク質複合体の導入条件を最適化した。その結果、A. limacinumにおけるCRISPR/Cas9システムを用いたゲノム編集技術を確立することが出来た。
|