研究実績の概要 |
希少疾患アルカプトン尿症は先天代謝異常症のひとつで、ホモゲンチジン酸が大量に尿に排泄されることが特徴である。アルカプトン尿症の臨床症状として、尿の黒変化や関節への黒色色素の沈着などが観察されるが、それらはホモゲンチジン酸の重合が原因だと考えられている。本研究では、ホモゲンチジン酸の重合反応の全容を解明して、アルカプトン尿症の診断や治療に応用することを目標とした。まずはホモゲンチジン酸の酸化二量化反応を開発し、その反応をアルカプトン尿症の迅速診断に応用することを第一目標として研究に取り組んだ。 本年度、モデル化合物を用いたキノン二量化反応を開発した。モデル化合物としてビタミンK3(2-methyl-1,4-naphthoquinone)を基質に用いて条件検討をした結果、イオン性液体中130℃で処理すると、1-methylKuQuinoneが得られることを見出した。1-MethylKuQuinoneは特異な光化学・電気化学特性を有する化合物として知られている。さらにこの反応では、反応溶液が黄色から鮮やかな赤色へと変化することを見出した。同様の反応は他の1,4-ナフトキノンを基質としても進行することを確認した。また、本基質となるホモゲンチジン酸及びその酸化物の合成にも取り組んだ。これら化合物は非常に不安定であり、反応条件を厳密にコントロールして分解を防ぐ必要があった。1,4-ジメトキシベンゼン誘導体の酸化条件を詳細に検討し、これら化合物を安定に合成する方法を確立した。次年度にイオン性液体中の反応を検討する予定である。
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