研究実績の概要 |
本研究では、研究代表者らが新規に同定した全能性細胞特異的および受精後のリプログラミングに重要であることが示されている既知の遺伝子を用いた新規リプログラミング法を開発することを目的としている。 体細胞核移植胚から樹立された核移植ES細胞は、iPS(induced pluripotent stem)細胞よりES(ES)細胞に近いメチル化状態や遺伝子発現を示すことが明らかにされている。このことから、卵子に含まれる多数の因子でリプログラミングした細胞の方が、4つの転写因子(Oct3/4, Klf4, Sox2, c-Myc : OKSM )でリプログラミングした細胞よりも「高品質」な細胞であると考えられている。これらのことを考慮し、本研究では、当研究室において同定・解析を行っている全能性を有する初期の着床前胚に特異的に発現する遺伝子群(Trim61, Pramef12, Rfpl4, Zc3h6, Zbed3, Zfp92, Klf17およびBtg4: 全能性細胞特異的遺伝子)を用いて、iPS細胞を高品質化することを試みた。今年度は、OKSMに加えて全能性細胞特異的遺伝子を発現させることにより、各遺伝子がiPS細胞の樹立効率に及ぼす影響を検討した。その結果、全能性細胞特異的遺伝子の中には、iPS細胞の誘導を促進する遺伝子と拮抗して働く遺伝子の2種類存在することが明らかとなった。今年度は、MEFに山中因子を恒常的に発現させ、各全能性細胞特異的遺伝子を「開始」、「成熟」、および「安定化」の時期特異的に発現させ、個々の遺伝子がiPS細胞の誘導効率に及ぼす影響を検討する予定であったが、「成熟期」および「安定化」の時期特異的に全能性細胞特異的遺伝子を発現させたときのデータが得られなかった。一方で、3種類の遺伝子については、全能性細胞特異的遺伝子をノックアウトしたMEFについても検討を行った。
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