研究課題
前年度の研究により、酢酸菌の細胞内で超好熱菌Thermococcus kodakarensis由来のシャペロニンCpkBが、異種タンパク質の安定化に効果的であることが示された。このため、好熱好酸性のアーキアに由来する分子シャペロニンの利用を検討した。Sulfolobus acidocaldariusは、低pH環境で生育しており、酢酸菌内での共発現で安定な機能が期待される。本菌は3種類の分子シャペロニンサブユニットα、β、γを有しているが、生育温度幅が広く(55 ℃-85 ℃)、さらに生育可能pH 幅も広い(pH 1-5)ことから、生育条件に応じ、3つの分子シャペロニンの使い分けがなされていると予想された。各サブユニットの組換えタンパク質のシャペロニン活性をTrpCを標的に検証したところ、いずれのホモ体は活性を示した。3つのS. acidocaldarius細胞内での組成比について検証するため、カルボキシル末端のペプチドを合成し、それを用いて特異的抗体を取得した。免疫法にて検討したところ、高温環境下(82 ℃)では、αサブユニットの発現量が増加し、低温環境下(60 ℃)ではγサブユニットの発現量が増加することが明らかになった。次に各サブユニットの温度変化、及びpH変化に伴う構造変化を調べた。いずれの分子も高温での安定性が高く、βサブユニットが最も安定であった。γサブユニットは比較的低い温度で構造転移が見られ、他の2つの分子よりも異なる特徴を示した。βサブユニットが幅広いpHで安定であり、α、βサブユニットはpH変化で構造の変化が認められた。本菌の分子シャペロニンコンプレックスは温度、pH変化に伴い変化していると考えられる。βサブユニットが最も安定な物性を示し、カルボキシル末端側のアミノ酸配列でも塩基性のものが多く、酢酸菌での利用に適した分子と考えられる。
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