研究課題/領域番号 |
18K19193
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
仁木 宏典 国立遺伝学研究所, 遺伝形質研究系, 教授 (70208122)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | クローニング / ゲノム / 遺伝子組換え / 形質転換 |
研究実績の概要 |
シームレスクローニングと呼ばれる制限酵素による切断を必要としないDNAクローニングが普及し始めている。この方法は、市販の酵素・試薬キットなどを使用せずとも大腸菌細胞内に直にDNAを形質転換するだけでクローニングを可能とする。この廉価かつ簡便な細胞内でのシームレスクローニングを高効率で行わせるため、高形質転換効率-高インビボ組換え活性を持ったこれまでにない高機能宿主大腸菌株の開発を目指す。そのためまずはシームレスクローニングの分子メカニズムを解明を試みてきた。大腸菌の網羅的遺伝子破壊変異ライブリーを使い、高形質転換効率-高インビボ組換え活性に関連する遺伝子の探索を行った。その結果、1)細胞内の相同組換えに関する遺伝子群、2)DNA取り込み関する遺伝子群が見出された。このスクリーニングで見つかって形質転換効率に影響を与える遺伝子群の解析を進めることで、未だ不明である大腸菌のDNA取り込みメカニズムの解明にも迫ることが可能となった。形質転換に影響する変異株の特定のため、(A)複製起点の性質の異なるプラスミド、(B)複製起点は同じで異なる抗生物質耐性遺伝子を持つプラスミド、(C)プラスミドの環状化と線状化による形質転換効率の違い、 (D) PEG/Mg2+法やCaCl2法による形質転換法による効率の違いなどを調べる。そして、DNAの取り込みに直接影響する遺伝子変異であることを立証する。そして、形質転換効率を向上させる変異の遺伝子を組み合わせ、相加的、相乗的にDNA取り込み反応を向上させ、特に10kbpを超える長いDNAの形質転換効率が上昇する大腸菌株の開発を行う。この高機能宿主大腸菌はゲノム合成研究等にも画期的な効果をもたらすものと期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大腸菌の網羅的遺伝子破壊変異ライブリーのスクリーニングから見出した高形質転換効率-高インビボ組換え活性の遺伝子破壊株について解析を進めた。環状プラスミドを使った形質転換効率などの測定を行ったところ、rpoZ遺伝子、yfhA遺伝子、rsxC遺伝子、yeaE遺伝子、slyA遺伝子、及びsapC遺伝子の遺伝子破壊により形質転換そのものが促進されていることが明らかとなった。そのうちRNAポリメラーゼの構成因子の一つであるオメガ因子をコードするrpoZ遺伝子の形質転換効率の向上の機構についてさらに詳細な解析を進めた。オメガ因子はRNAポリメラーゼの転写の際に遺伝子の選択性に影響する因子である。この遺伝子の選択性に基づきRNAポリメラーゼは一群の遺伝子の発現を正または負に制御する。この制御下にある遺伝子の中に形質転換効率に影響するものがあると考え、その特定を試みた。オメガ因子依存的なRNAポリメラーゼの制御遺伝子群は染色体全体の散在している。そのどれが関係しているのかを特定するため、まず大腸菌の広域染色体領域欠損変異株を利用した。染色体の約20%、1Mbの領域を欠失した欠損変異株では、rpoZ遺伝子の欠損による形質転換効率の向上は認められなかったのに対して、その親株に当たる非欠損株ではその向上が確認できた。この結果より、この欠失染色体領域内に形質転換効率に関係する遺伝子が存在することが判明した。1Mbの欠失変異株の作製過程で27株の欠失変異体が順次に作製され欠失領域を拡大させた。この27株について形質転換効率を調べたところ、第6段階の欠失変異株からrpoZ遺伝子の欠損による形質転換効率の向上が失われていた。従って、この段階で欠失された領域に含まれる69遺伝子の中に原因遺伝子があると推定された。この領域の個々の遺伝子破壊変異株を使って原因遺伝子の特定を試みている。
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今後の研究の推進方策 |
rpoZ遺伝子、yfhA遺伝子、rsxC遺伝子、yeaE遺伝子、slyA遺伝子、及びsapC遺伝子の遺伝子破壊により形質転換そのものが促進された。そのうちRNAポリメラーゼの構成因子の一つであるオメガ因子をコードするrpoZ遺伝子の形質転換効率の向上の機構についてさらに詳細な解析を進めた。その他の変異遺伝子に関してもその作用機序に関して研究を進めるが、同時にこれらの変異を組み合わせて形質転換が相加的、相乗的に向上するのかを調べて研究の目的の一つである細胞内でのシームレスクローニングを高効率で行わせるため、高形質転換効率の高機能宿主大腸菌株の作成を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
形質転換に関係する変位遺伝子群の特定に関する実験系でアッセイ方法の改良などの理由により当初の計画の遅れが生じ、使用額の繰越でその研究を継続して行う。
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