研究実績の概要 |
in vivoクローニング(iVEC)法ではPCR増幅後の相同配列を持ったベクターDNAとクローン化DNAをある種の大腸菌変異株に形質転換するだけで、目的の組換え体クローンが得られる。この技術は、廉価かつ簡便な細胞内でのシームレスクローニングを実施できるという利点がある。しかし、効率の点で問題があった。そのため、in vivoクローニングの分子メカニズムの遺伝学的な解明を行い、この改善を目的とした。in vivoクローニングの分子メカニズムとしては、従来言われていたrecA, recET依存の組換え反応ではなく、3’-5’エンドヌクレアーゼXthAがあった。XthAはDNAの3’末端から二本鎖DNAを一本鎖DNAが露出し、相同な一本鎖DNA同士がアニーリングをさせる活性であることを明らかにした。さらに、この活性を向上させるため高形質転換効率の大腸菌株の開発を目指した。大腸菌の網羅的遺伝子破壊変異ライブラリーを使い、高形質転換効率に関連する遺伝子の探索を行った。その結果、まず形質転換効率の低下した遺伝子の中にリポ多糖合成に関するものが複数見出され、細胞膜表面のリポ多糖がDNA取り込み効率に関係していることが明らかになった。おそらく、細胞表面にDNAを吸着させる活性に関与している。他方、形質転換 効率を向上させる変異の遺伝子の候補としてrpoZ遺伝子を見出した。rpoZ遺伝子はRNAポリメラーゼ の構成因子であり、多くの遺伝子がその発現制御を受けている。したがって、RNAポリメラーゼの制御下にある遺伝子の中に形質転換効率に影響するものがある と考えた。事実、欠失染色体領域コレクションを使ったスクリーニングの結果、69遺伝子の中に原因遺伝子があると推定され、その特定を試みた。継続して研究を行ったが新型コロナ感染拡大により、研究の遅延もあり、最終的には遺伝子の特定には至らなかった。
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