本申請課題では、強酸性土壌では好気的環境で酸性適応型アンモニア酸化細菌‐脱窒糸状菌共生系がニッチを共有し一体化しており、この共生系の反応により大量の一酸化二窒素が発生すること、およびアンモニア酸化細菌が酸性条件化における亜硝酸分解を回避して糸状菌に亜硝酸を供給する機構が存在することを明らかにし、酸性適応型アンモニア酸化細菌‐脱窒糸状菌共生系が土壌で実際に機能していることを証明する。この目的を達成するために以下の成果を得た。 1.N2Oが多量に発生している時期の圃場において、アンモニア酸化菌と脱窒糸状菌が同時に存在していると思われる場所からこれらの微生物を機能しているコミュニティーとして分離するため、難培養微生物の分離手法を応用した分離基材を考案した。これを土壌に埋設し原位置培養を行った。1か月毎に数回基材を回収して基材中に微生物が含まれているか明らかにするため顕微鏡観察を行った。その結果、培養基材中特に基材の表面に糸状菌の菌糸が高密度に存在していることが分かった。現在糸状菌が窒素代謝に関わっているか、また糸状菌とコミュニティーを構成している一般細菌やアンモニア酸化細菌がいるか検討している。 2.糸状菌の分離・培養方法は細菌の培養方法とは全く異なる。また機能している微生物コミュニティーを分離するためには、土壌に近い状態での培養方法を確立する必要がある。以上から培養条件を検討し、また活性測定方法等を確立した。
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