研究実績の概要 |
これまでに微生物由来のメタンガスを産出する油ガス田の成因解明のため,地下深部における微生物によるメタン生成メカニズムの解明を行ってきた.そして,これまでに研究対象としてきた地上から隔絶された天然ガス貯留層中には,約100万年以上前に堆積した有機物が存在している.このような堆積物中では有機物は重合・縮合を繰り返し巨大な分子量を持つ難分解性の有機物に変化していると考えられおり,地下微生物がどのような物質を分解して生きているのかは明らかではない.しかし,これまでの研究で堆積有機物であっても全有機炭素の約18%が分解されメタンが生成することが明らかとなった.この時に検出された微生物の基質利用性から陸源有機物に含まれている化合物が,地下の生命活動を支えている可能性が示唆された.地下深部から分離した微生物をこの化合物を用いて培養を行った場合に限り生産される物質があり,その条件においては他の化合物を用いて培養した場合よりも,55℃という高温条件において長期間培養しても菌体の溶菌が見られなかった. 本研究においては,陸源有機物に含まれている化合物を基質として培養した場合に微生物により生産される物質が,高温貧栄養という深部地下環境における生き残り戦略に関係していると想定し,この物質の同定および測定法の開発を行うことを目的としている.H29年度は,嫌気リアクターの立ち上げおよび菌体を含む生成化合物の回収を行った.さらに,目的物質の抽出方法の検討を行った.
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