ウイロイドは、約250~430ヌクレオチドの高い分子内相補性を示す環状1本鎖RNA病原体で、感受性作物の矮化、葉巻、果実障害などの原因になる。近年、野菜・花卉類を中心に、特定重要病害指定のポスピウイロイドが世界中に流行し、国際植物検疫上の重大な懸念材料となっている。国内外の育苗・採種現場ではPCR法に代表される高感度遺伝子検出法で診断されているが、感染種苗を簡便により効率よく検出する新技術の開発が求められている。本研究は、抗体に代わる分子認識が可能な生体物質である核酸アプタマーに基づく新規なウイロイド診断・防除薬を開発することを目的にしている。 ウイロイドを標的とするアプタマーを選抜するために条件を設定したSELEX法を繰り返し、得られたウイロイドと結合する核酸アプタマー候補ssDNA集団の多様性と特定のssDNA配列の濃縮程度を次世代シークエンサーによるアンプリコン解析で分析し、多様な配列を有するアプタマー候補配列を収集した。 2020年度は、ウイロイドアプタマー選抜用SELEX法の基本プロトコールをより簡便に改良し、15ラウンドのSELEXにより、人工合成したランダムな30塩基のssDNAライブラリーから、ジャガイモやせいもウイロイド(PSTVd)を標的とする核酸アプタマー候補ssDNA集団を選抜・濃縮し、5,10,15ラウンド目の選抜集団の次世代シークエンサーによるアンプリコン解析を実施した。 アンプリコン解析の結果に基づき、PSTVdと結合する可能性のある18種類のアプタマー候補配列を選抜した。アプタマー候補配列を人工合成し、純化精製したPSTVd環状分子との結合性をアフィニティカラム吸着法で分析した結果、1種類が強く、5種類が弱く結合し、PSTVd環状分子と結合するアプタマーを選抜することができた。
|