研究課題/領域番号 |
18K19199
|
研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
成澤 才彦 茨城大学, 農学部, 教授 (90431650)
|
研究分担者 |
西澤 智康 茨城大学, 農学部, 准教授 (40722111)
|
研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
|
キーワード | Mortierella属菌 / 内生細菌 / 共生 / 腐生 |
研究実績の概要 |
近年、菌類に内生する細菌の報告が増加しており、その機能についても研究が進められている。土壌に普遍的に存在する腐生性菌類であるMortierella属菌にも内生細菌が存在するが、植物との相互作用の詳細は明らかになっていない。植物根部から分離された6菌株4種のMortierella属菌を供試菌株とし、トマトへの接種試験を行ない地上部乾燥重量を最も増加させたM. humilis S2を選抜した。また、供試菌株すべてに内生細菌が存在することが確認された。選抜菌株にも内生細菌が存在したため、抗生物質処理により、内生細菌除去株M. humilis S2BF2を作成した。トマトを用いてスクリーニングと同様に接種試験を行った。Mortierella humilis S2を接種したトマトは明らかな病徴を示すこと無く生育し、地上部の乾燥重量が対照区と比較して1.3倍に増加した。一方、M. humilis S2BF2を接種したトマトでは、10個体中7個体で根部先端の褐変、側根の未発達あるいは葉の褐変が認められた。同内生細菌がM. humilis S2の植物への生育促進効果に影響していることが示唆された。さらに、菌類との共生関係が強固になると考えられている宿主植物のストレス条件下において、M. humilis S2およびS2BF2のトマト生育に対する影響を検証した。高温条件では、M. humilis S2を接種した場合、トマトの地上部乾燥重量は対照区と比較して有意に増加した。一方、M. humilis S2BF2を接種した場合、生育不良が確認された。栄養ストレス条件では、M. humilis S2およびS2BF2接種区で地上部乾燥重量の増加が確認された。一方、M. humilis S2BF2接種区では枯死個体も確認された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トマトの生育を促進するM. humilis S2の選抜に成功した。また、同菌株から内生細菌を除去し、M. humilis S2BF2を作成した。そこで、両菌株をトマトに接種し、比較した結果、どちらも生育促進能を示すが、M. humilis S2BF2では根および葉に褐変部位が確認された。以上より、同内生細菌の存在の有無により、植物共生性や病原性などの性質が変化することが示唆された。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度の結果を受け、今後は、M. humilis S2近縁種がトマトの生育に与える影響について調査する。また、M. humilis S2の植物根部における存在場所を調査し、さらに土壌を用いた接種試験を行う。さらに植物根への影響を確認するため、真菌の代謝分泌物を調査する。また、同菌の内生細菌による宿主真菌および植物への影響を解明するため、内生細菌の培養および再導入を検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
分離を試みている内生細菌が、新種の可能性が高い。そのため、培養に今まで以上の時間が必要となり、ゲノム解析用の経費が未使用となった。2019年度、培養に成功次第、ゲノム解析を行ない、経費を使用する予定である。
|