研究課題
高層の淡い雲の構造・性質解明を主目的に、研究代表者らは高感度高分解能のミリ波レーダ FALCON-I (FMCW Radar for Cloud Observation-I)を開発・運用してきた。この装置は従来のレーダに較べて周波数が 95 GHzと高く、空間分解能や感度が優れており、またドップラー測定の精度も高いことが特徴である。 FALCON-I を用いて、過去 10 数年にわたって地上から高度 20km までの範囲で、陸および海洋で雲や雨の観測を実施してきた。これらの観測を通じて FALCON-I では大気中に浮遊する昆虫などが観測できることが示された。そこで、FALCON-I などの新しい手段を用いて、どこまで小さい浮遊物が検出できるか、その計数、サイズ分布、時間および高度分布、季節変化を探索・解明する手法を創設することが本研究の目的である。初年度の 2018年度は、9月末から 10月初めにかけて、空中浮遊物を採集する係留気球実験を実施し、FALCON-I で得られるエコーデータとの比較を行った。また、これまでに行った春・秋・冬の空中浮遊物採集実験の結果の解析・整理を行った。その結果、大きさが 0.5mm 程度以上の浮遊物体は、もれなく FALCON-I で検出できていること、これまでに行った春・秋・冬の季節と比べて、2018年度 9・10月の空中浮遊物の空間密度は 1.5倍高いこと、気温が低い冬期は浮遊物体の空間密度が 1/5 程度となること、などが明らかになった。2019年度はさらに解析を進めるとともに、地上から上空までの風速・風向と大気浮遊物体の空間密度の相関などについて調べた結果、風が弱い場合のほうが大気浮遊物体の空間密度が高いことが分かった。さらに風の様子のシミュレーションなどを行い、大気浮遊物体が受ける影響を評価し観測結果と比較検討を進めた。
2: おおむね順調に進展している
本課題の初年度であった2018年度は、当初予定していた通り、晩夏の空中浮遊物の採集実験を実施した。また、本課題研究の開始前までに行った春・秋・冬の季節の空中浮遊物採集の予備実験結果と比較などを進めた。2019年度はこれら観測結果についてさらに詳しい解析を行い、大気浮遊物体の空間密度と風速・風向、高度の関係などを多岐にわたって比較考察を進めた。これらはさらに解析・整理が必要であるが、本研究課題はおおむね順調に研究計画を進めることができているといえる。
2018, 2019年度は前述のように晩夏の空中浮遊物の採集実験を実施するとともに、本課題研究の開始前の2017年度までに行った春・秋・冬の季節の空中浮遊物採集の予備実験結果と比較や、地上から上空までの風の様子との比較考察などを進め、前述の結果などを導いた。今後はさらに解析データを増やすことで、空中浮遊物のサイズ分布、高度分布、上昇気流や気温・天候との関連などを総合的に調べていく。
次年度使用額が生じた理由は、計画の時点で見込んでいた、電源装置など既存の備品の劣化が予想より少なかったことなどから、支出を少なくすることができたことによる。次年度は、必要に応じてこれらの物品および他の消耗部品の購入と、データ整理・解析、および研究成果発表の論文投稿などの費用などに使用する。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (25件) (うち国際学会 10件、 招待講演 2件)
Radio Science Bulletin
巻: 3 ページ: 1月6日