研究課題/領域番号 |
18K19202
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
有村 慎一 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (00396938)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2022-03-31
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キーワード | 植物ミトコンドリア |
研究実績の概要 |
私たちが開発した世界初の植物のミトコンドリアゲノム標的遺伝子破壊技術,mitoTALEN法を用いて,ナタネとシロイヌナズナを用いて植物ミトコンドリアゲノムの撹乱と新規雄性不稔個体の創出を試みた.ナタネについては先行研究で用いた標的配列破壊mitoTALEN発現ベクターを用いて既に複数の形質転換植物体を得ており,そのミトコンドリアゲノム配列の変化をPCRや次世代シークエンスを用いて解析した.その結果,ミトコンドリアゲノムは標的配列部分の欠失を中心に,ゲノム構造の大きな変化がみられた.これによって,新たなキメラ遺伝子創出を期待している.シロイヌナズナについては,mitoTALEN導入によるミトコンドリアゲノム改変は初めてであり,その開発に挑戦した.mitoTALENの設計標的配列によっては,その破壊による致死性が考えられるため,標的遺伝子を二種類,標的部位を計4種類設計し,検討した.また,mitoTALENの発現の場所や量が影響する可能性を考え,プロモーター配列を三種類,mitoTALENの種類(二分子型と一分子型)の組合せ,総24種類のコンストラクトを作製し,これを順次シロイヌナズナの核ゲノムに形質転換した.その結果,2つの遺伝子のうち,1つについては欠失型の配列を採ることに成功したため,まずはモデル植物シロイヌナズナでも初のミトコンドリアゲノム編集/標的遺伝子破壊を行うことに成功することができた.そのほか,活性の高いプロモーター種類の選抜とmitoTALENの二分子型がよいことなどが明らかとなった.シロイヌナズナでの高効率ミトコンドリアゲノム編集システムを用いて、200系統程度の新規ゲノム編集系統を作成し、これの表現型スクリーニングを続けた。現在まで明確な遺伝型郵政不稔系統はなかったが、期間内に世界をリードする植物mitoTALEN技術をさらに改良進展することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画で目指した細胞質雄性不稔の系統は得ることができなかったが、mitoTALENの改良法が複数でき、さらに世界をリードする技術に進展することができた。また、その結果を複数の国際論文に投稿掲載することができ、Research Highlightとして紹介されるなど、国際的に高い評価を得ることができた。これらの発表によって、国際的な共同研究依頼が複数きており、今後の進展につながる高い成果を得ることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
改良型mitoTALEN法によって、植物ミトコンドリアゲノムの標的遺伝子破壊、ゲノム構造変化促進、誘導型ミトコンドリアゲノム変化などが開発できた。公開とともに高い評価と国際共同研究依頼をいただいており、今後できる限りこれらに応じて技術供与、試料供与しながらリードを続けたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID19に関連する緊急事態宣言による勤務時間の減少、物理的制限、納入予定製品の遅延が生じたため。今後も影響がありうるが、遅延部分の研究計画を粛々と施行する。
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